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幸せのちから [アメリカ映画 ドラマ]

幸せのちから

映画公式ページ:http://sonypictures.jp/movies/thepursuitofhappyness/

ウィルスミス親子が主演の「幸せのちから」を見てきました。

「全財産21ドルから立ち上がった父子の、実話に基づいた感動作」とチラシのコピーが謳うようにクリス・ガードナーという人の実話に基づいた出世物語です。

80年代、医療機器を買い上げてそれを医療機関に売るセールスをしていたクリス(ウィルスミス)は、不況のために売れず、税金も滞納、家賃も滞納、あげくは奥さんに出て行かれてしまうという憂き目に合います。そんなある日、赤い車から降りてきた羽振りのいい人にクリスは尋ねるのです。

「仕事は何をどうすればそんなふうになれるんですか

その人は株の仲買人でした。

「数字に強く、人の扱いがうまく出来れば誰でもなれるさ

それから証券会社の門をたたき、半年間の無給の研修を終え、見事20人の中から1人選ばれ、株の仲買人となり、今では自分の投資会社を持つまでになる、アメリカンドリームのお話です。

でもそこまで行くまでやはり苦労の連続です。

家賃を滞納する代わりに家のペンキを塗らなけばならなくなり、そんな折突然駐車違反の罰金を払ってないから刑務所に一日入らなければならず、なんと翌日には大切な証券会社での面接がありました。時間がないのでそのラフなペンキ姿のまま刑務所から面接会場までダーッシュ。ユーモアで面接官を笑わせ、見事合格にしてしまうという荒業を成し遂げます。

また研修生としての半年の無給期間、医療機器を休みの日に売りに出かけ、せっかく機械が売れてお金ができても、前の滞納の税金のために預金からお金を国か州から強制的に引き出され、またも家賃が払えずとうとう家を追い出される羽目にあいます。それで教会の一日限りの宿を頼って時間になると少し早めに会社を飛び出しては並び、それにあぶれると駅などでホームレスをするという半年。ずっと5歳の子供を連れてのことです。

売り物の医療機器も盗まれたり、都合で置いていかねばならず人に持っていかれたり。散々の日々

舞台は80年代のアメリカ・サンフランシスコですが、医療機器が一台売れると250ドルもらえ一ヶ月何とか食べていけると言っていたので、日本で80年代にたった250ドルではいくらなんでも食べていけなかったはずだ、と思ったのですがよくよく考えてみれば為替レートが違うんですよね。今はその頃と比べたらすごく円高だということに気がつきました。日本の円はその頃から倍くらいの価値になってます。

また主人公クリスが自分の住まいをなくした時に頼る教会の一夜限りの宿ですが、アメリカは食事だけでなく宿も無料で提供してるのだと、懐の深さを知りました。

目標さえしっかり定めあとは身の振りかまわず突進していけば、こんな風に道は開けてしまうものだと、改めて感じました。チャーチルが言った”Never,never, never give up”(決して、決して、決して諦めるな)を何となく思い出していました。それと「ピンチはチャンス」不運は幸運になりうる絶好のチャンスなのだということ。

その一方で映画が何となくしっくり来なかったのは、もうこういう話は自分の中では終わっているし、社会全体から見てもやはり古いのですね。アメリカンドリーム自体が。確かに彼の人生は素晴らしい。賞賛に値します。けれど半年無給で働いて、残りの19人はその後どうなったのか、そのほうが余程気になりました。そしてこの制度は一体どうなのよと。またいつまでたってもホームレスから抜け出せない人々のこと、競争が熾烈になればなるほど、金持ちと貧乏人の差が拡がる社会になると思いを馳せてしまいました。

と言うわけで、私的にはいま一つの映画でした。しっくりこないということで。たぶんそれこそ80年代に見てたら違った印象だったかもしれません。万難を拝し生き馬の目を抜くほどの競争はいまやもう時代にそぐわない気がしました。この映画の原題は”the PURSUIT of the HAPPYNESS”(happinessでないのがみそ)「幸せの追求」なのですが、一人勝ち組になって金持ちになることだけが幸せの追求だったのか疑問に残ります。とても今の時代に必要なメッセージとは思えませんでした。このクリス・ガードナーさんのこの体験記がベストセラーとなり、この映画が当たるとなるとますますお金が集まるわけでむしろ、ビル・ゲイツ氏やウォーレン・バフェット氏のようにお金をどのように社会還元するのか、これからのクリス・ガードナーさんの生き方に注目したいと思いました。


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live07151

live07151(リアブドアのです)ですが、オオタです。いつも本当にありがとうございます。
nanaoさんの記事、とても理解しやすく、まるで本当にみているような気になりました。はるかぜさん同様、文章作成のセンスがありますよね。
 いまいちということでしたね、nanaoさんの見解(残りの19人、、、)、とても暖かいめのつけどころだと思います。うれしくなってきます。
 ウイルスミス、ハッチというラブコメディーはご覧になったでしょうか?ラブコメですが、なかなか粋な映画でしたよ・
 ブログ更新楽しみにしています。
by live07151 (2007-01-13 18:43) 

naonao

>live07151さんに名前を変えたのですか?いつもありがとうございます。ウィルスミスの映画「最後の恋のはじめ方」ですよね。Hitch(ヒッチ)という原題でしたね。主人公の名前でもあるけど引っ掛けるという意味もあって女性を引っ掛けるということをかけてるネーミングだと思いました。私も見ました。ラブコメディ好きですが、もっと笑いが欲しかったかなあ。ちょっと厳しいでしょうか?(笑い)
by naonao (2007-01-14 11:46) 

live07151

いえいえ、確かに笑うところはコメディというわりには普通だったかもしれませんねー。ラブコメをいろいろと見てないのでわかりませんが、またいろいろみてみたいと思います。ラブコメ以外でもおもしろいのあれば教えてくださいね。
by live07151 (2007-01-14 12:58) 

naonao

>live07151さん、ラブコメでないですが、ジムキャリーの「ブルースオールマイティ」とかウッディアレンの「おいしい生活」、1~2年前の「プロデューサーズ」なんかが今思い出せる楽しい映画で、お勧めです。試写会で見たものはブログにアップしてますので、どうぞ参考にしてください。こちらこそ何かおもしろいものあれば教えてください。

>たいちさん、nice!ありがとうございます。
by naonao (2007-01-15 22:27) 

oba

こんにちは。obaです。試写会の券のおすそわけありがとうございました。久しぶりの大きなスクリーンで楽しみましたが、naonaoさん同様、確かに何かしっくりこないものを私も感じました。多分、”the PURSUIT of the HAPPYNESS”が「結局は金かい」ということが引っかかるんだと思います。それともちろん主人公にとっては息子と過ごすことも大事になってはいますが。日本もそうですが、お金がないとなかなか厳しいですが、アメリカはもっとえげつないですね。その逆で、宿までホームレスに与える教会などがあるのが面白いところなんでしょうが。ブータンの話にも関係しますが、何が幸せかということは考えさせられますね。ただ、主人公の逃げない、何一つ人のせいにはしないというのだけはスゴイと思いました。私だったらグダグダ言ってますね。あと、一緒に見た若い友人が、建物はまあ一緒だろうが車なんかをみんな80年代にして撮影してると言ってました。私は気付きませんでしたが。
by oba (2007-01-17 12:19) 

naonao

>こんにちは。わざわざ私のブログにまでひきずり込んでしまいごめんなさい。でもコメントいただいて嬉しいです。どうもありがとう!!obaくんの指摘してくれた通り、幸せの先がお金だったのが落胆の理由ですね。確かにたった21ドルから億万長者になってるのですからすごいですし、これぞと決めて突っ走る姿は素晴らしかったです。私の場合これだと思って突っ走ってみたらこれじゃあなかった、ということが多いのでトホホとなるのですけど(笑い)
80年代の車だなんて気づきませんでした。見る人が違えば目の付け所が違い、おもしろいですね。また気軽にコメント入れてください。お待ちしてます。
by naonao (2007-01-17 22:17) 

こんばんは。そうですね、当時は固定1ドル360円とかじゃないでしょうか。私は"お金"の追求だとは思いませんでしたね。お金とかの結果ではなくて、幸福を追求することに意味があるような気がします。なので、他の19人は採用されませんでしたが、仕事を一生懸命追求したことが、いずれその後の人生に大きく影響することになったと思います。と、勝手に考えています(笑)。今のニートとか、追及するものが見つけにくい時代に、ちょっと考えされられた映画でした~。
by (2007-01-29 00:38) 

naonao

>katoyasuさん、アクセスありがとうございます。80年代は既に固定相場制でなく変動相場制でしたので360円はありえませんが(70年代半ばに変動相場制に移行してます)、1983年に私が初めてヨーロッパに行くのに米ドルのT/Cを作ったとき1ドルが230円だった記憶があります。今120円~122円で円安が進んだと騒いでいますが、その頃に比べたらかなりの円高ですね!!この映画はもちろん素直に見れば主人公の幸せの追求の先に成功と金があったのだからアメリカンドリーム実現でめでたしめでたしなのですが、何せひねくれてる私(笑い)なので、ちょっと厳しいコメントになりました。厳しくてすみません(笑い)彼の幸せの追求をその幸福の追求そのものに重きを置けば、確かにいい映画だったかも。
by naonao (2007-01-29 17:26) 

かずかず

こんばんは、先日はコメントありがとうございました。
前に「最後の恋のはじめ方」をみておもしろかったから、
またウィルスミスの映画をみてみようかと思っていましたが、
naonaoさんのを読むと、また一味違った見方になりました。
でも純粋にアメリカンドリームで「あーよかった!」と思うのも、
好きなので、みちゃおうかなと思います。
何かのためにがんばることは、人生にプラスですからね。
それでは、初めてなのに長々と失礼しました。
by かずかず (2007-01-30 20:51) 

naonao

>かずかずさん、訪問ありがとうございます。
映画を観て感じることは人それぞれですね。だから私が感じたようにはかずかずさんは感じないでしょうし、かずかずさんはかずかずさんで感じることがあると思うので是非ご自身でご覧になってください。一緒に行った友人はこの映画を褒めてましたし、今日新聞に載ってた評もすごく好意的に書かれてあり、他の方のブログ記事を見ても皆いいこと書いてありますし・・。もしかしたら私くらいかもしれません。この映画にこんなに批判的なのは(笑い)
by naonao (2007-01-30 21:48) 

流星☆彡

こちらにも おじゃまいたします!m(__)m
私が まず感じた感想と 骨子が同様で、また 知らない事=当時の米現地の
物価に関する事情等が勉強できて、面白かったデス!ところで…
今 たいちさんの記事を読んで来たのですが、クリス氏ご本人は 成功した後、
社会還元を実践されていたことを知り(From…自伝)、自記事の感想の
大きな支柱が 根こそぎ崩れるような感じで、困っております。(+_+;A)
これを機会に、ぜひ クリス・ガードナー氏の事について 知っていきたい!
と 思い至っております。
by 流星☆彡 (2007-02-01 22:32) 

naonao

>流星☆彡 さん、ありがとうございます。流星☆彡 さんもこの映画に対して同じ感想だったのですね。流星☆彡 さんのご指摘でもう一度たいちさんの記事読み直しましたが、クリス・ガードナー氏は既に企業の利益の10%を寄付してるんですね。うーん、映画でそのことをちゃんと織り込んで欲しかったです!!この事実を知ってるのと知らないのとでは記事も変わってきますね。でももう書き直しはしません。あくまで映画見ての感想なのでいいです(笑い)
by naonao (2007-02-02 21:07) 

じみりん

こんばんは。厳しいコメント‥との事ですが、私のよりはずっと褒めていらっしゃるような‥(^^ゞ
ちなみに、私も映画を観ている時は「あとの19人は‥」「契約を取らせるくせに6ヶ月無給って‥」と思っていましたが、パンフを(立ち)読みしたら、実際は安いけれどちゃんと研修生にも給料が支給されていたそうです。
by じみりん (2007-02-04 04:30) 

naonao

>じみりんさん、コメントありがとうございます。
研修生は半年間、無報酬ではなかったのですか?何だかまた肩透かしにあった感じです。こういうことは映画にちゃんと盛り込んでほしかったなあ。10%の寄付といい、この無報酬ではなかったことといい、ブログ記事が全く今では違ったものになってしまいますね。トホホ。
by naonao (2007-02-04 11:09) 

隆庵

おじゃまします。やはり女性には不人気なこの映画……理屈ではなく、あの切実な感覚というものを映画で表現しようと思うと大変なんですけどねえ。でも実話を映画化するってホントむつかしいんですよね。
by 隆庵 (2007-02-06 12:14) 

naonao

> 隆庵 さん、こんばんは。
この映画は女性には不人気な映画なのですか?
いろいろわかった事実をもっと映画に反映させてくれたら感動できたかもしれません。残念!!
by naonao (2007-02-06 22:17) 

りんこう

naonaoさん始めまして。
こういう半生を描く映画というのはむつかしいですよね。
以前、デンゼル・ワシントンの「ハリケーン」という映画を観て、
興味を持って原作を読んだのですが、だいぶ端折られていて驚きました。
でも、ウィル・スミスは好演だったと思います。
by りんこう (2007-02-12 23:46) 

naonao

>りんこうさん、こんばんは。
確かに原作と映画って全く別物になってることが多いので、この映画も作るの大変だったかもしれませんね。いろんなコメント頂き、私もこの映画見直してます。
by naonao (2007-02-13 22:15) 

mori

はじめまして。
映画って、観る人のいままでの経験とか価値観で大きく感じ方が違ってくるものですよね。ワタシは主人公がバスに乗るときに女性を押しのけていったりとか、教会の前で喧嘩したりとか(そういう場面を子供に見せてしまうとこ)にお金が無いってことはここまで人を変えてしまうのかな。。。と悲しくなったのでした。どんなになっても子供にだけは見せたくない姿だな~と(>_<)
感じ方のちがう映画の感想をみると「そんな感じ方があるんだ!」と新鮮で楽しいですね~
by mori (2007-02-17 13:44) 

naonao

>moriさん、はじめまして。こんにちは。
確かに映画は観る人によって感想が様々。おもしろいですね。この映画は特にいろんな方の意見があって一筋縄で行きません。意見も割れてます。私もそれを楽しんでます。
by naonao (2007-02-17 15:51) 

naonao

>工藤俊作さん、nice!ありがとうございます。
by naonao (2007-02-18 21:19) 

sicca

こんにちは!
私はもう少し家族としての「幸せ」を追求してくれるのかと思ったんですが、「クリスの幸せ」がメインとなっていて、ちょっと悲しくなりました。
クリストファーのその後が気になって仕方ありません。
確かに時代とのズレを感じますよね。
by sicca (2007-02-23 01:29) 

naonao

>siccaさん、こんにちは。
本当時代錯誤の映画なんですね。そんな生き方はもう古いって感じなんですけど・・・。
by naonao (2007-02-23 11:08) 

frhikaru

日本とアメリカ、色んな意味で違いが沢山ありますが、労働時間に対する感覚も大きく違うところです。
何があっても1日6時間しか働かず、子供を迎えに行く父親というのは・・・日本にはいないでしょう。
毎日夜遅くまで無給のサービス残業に精を出し、子供が寝た頃に帰ってくるのが日本の父親というもののようです。
出世や金儲けを目指すというのは日米共通かも知れませんが、そのための手段は違うようです。
by frhikaru (2007-03-03 00:22) 

naonao

> frhikaruさん、こんにちは。
アメリカはやはり合理的ですね。アメリカのいい面はたくさんあるのでいい部分は日本ももっと取り入れて欲しいです。サービス残業は本当問題ですね。日本社会全体がNOを徹底して突きつけられるよう意識を変えていって欲しいです。
by naonao (2007-03-03 13:52) 

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