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沈まぬ太陽 [日本映画 賞受賞]

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東京国際フォーラムで「沈まぬ太陽」を観て来ました。

映画公式サイト:http://www.shizumanu-taiyo.jp/

舞台挨拶つきでした。司会の伊藤さとり、監督の若松節朗、俳優の石坂浩二、三浦友和、松雪泰子、鈴木京香が舞台に登場。また主演の渡辺謙はハリウッド映画撮影のためにロスからスクリーンで登場。

渡辺謙も一緒にフォトセッション(←eiga.comより拝借)

何年もかけて作られた作品だったようで、「今やっとできたということにはとても意味がある」というような石坂浩二のコメントがありました。チベットには埋蔵経典という考え方があり、必要な時にその経典が発見され人々に広まるという考え方があるのですが、まさにその考え方で、この映画が今の時代に必要とされているといったコメントで印象的でした。

また「今困難なことが立ちはだかっていますが、この映画が明日へのかすかな光となれば・・・」という渡辺謙のコメントがありました。渡辺謙の挨拶は特に、足を運んだ多くの客にねぎらいの言葉をたくさんかけ、好感度が抜群に良かったです。

そして驚いたことに、豪華なゲストだけでもびっくりなのに、近くの席には民主党の海江田万里が座ってました。テレビで見るより細身!でダンディでした。

この作品は「白い巨塔」「華麗なる一族」「不毛世帯」「大地の子」などを書いている山崎豊子の原作。映画は3時間22分と長く、そのため10分間のインターミッションが入ります。長かったけれど、ストーリー展開が良く、長さを全く感じさせませんでした。素晴らしい作品でした。

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高度成長時代の日本のエアライン会社を舞台に、その中で労働組合の委員長をしている恩地(渡辺謙)とその補佐をしてる行天(三浦友和)。いつしか二人は違う道を歩み始めます。恩地は罰則的な人事でパキスタンのカラチ、イランのテヘラン、ケニアのナイロビへ左遷。一方エリートコースと引き換えに、組合の分裂を画策する行天。

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恩地を妻(鈴木京香)が何も言わずに支え続け、行天の愛人(松雪泰子)がスパイ行動的なことをしてまで行天を支え続けます。

御巣鷹山の日航事件のようなジャンボジェット機墜落の大惨事が起き、新会長に国見(石坂浩二)がつくようになると、恩地は抜擢され国見のすぐ下で働き始めます。様々な汚職が暴露され、あるものはそれらを暴露して自殺し、あるものは職を追われ、あるものは地検に同行を求められます・・・。

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渡辺謙が演じる恩地は、会社のどんな理不尽な人事に対しても服従し、会社を決して辞めない。そして曲がったことが大嫌い。裏世界の汚い取引をすることもなく、そのため昇進もままならない。それでも自分の意志を貫いていく。こういう生き方は格好いいです。

そして世の中にはきっとこういう生き方を選択する人が少なからずいるんだろうな、と思います。

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最後にまた、自分が希望していた事故に遭った遺族会の面倒を見る役まわりにまわしてもらうはずだったのに、ナイロビへの転勤を命ぜられます。

どこまでも理不尽。でも恩地は恩地なりの境地を見出していきます・・・・。

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1960年代から現代に続く一人の男の生き様を描くこの作品は、日本の時代にリンクして、こんな人の人生もきっとあったんだろうなあと思わせました。その時、その場所に、同じような立場にあったら私も世間の人たちと同じ反応を示したかもしれませんが、少なくとも今の私が疑問なのは、アメリカ各地やヨーロッパ各地の転勤は喜ばしく、栄転であるのに、どうしてカラチやテヘラン、ナイロビなど第三世界への転勤は罰則的で人から蔑まされ、左遷ということになるのか、そこのところが不愉快だったし、わからなかったです。もちろん、第三世界は快適な先進国に比べたら生活するにも不便極まりないでしょう。だからこそ罰則的なのかもしれません。しかしそういうところでやっていける人間こそ、尊敬、賞賛に値すべき人間なのに世間での評価は低いなんて、やはり世間の評価というのはどんなに当てにならないんだろうと思ってしまいました。

私は海外で生活したことはなく、単なる旅人でありましたが、むしろ先進諸国よりも発展途上国のような国々を回っていて学ぶことが多かったです。あんまり発展途上国のような第三世界をバカにしてほしくないなあと。好き嫌いはあるでしょうが、どこの国にもいいところ、悪いところがあり、優劣なんてつけないで欲しいなあ・・・と思ってしまいました。

それにしても恩地の生き方、格好良かったです。自分ではできない生き方かもしれないけれど、こういう生き方は人々に感動を与えます。原作も読んでみたいと思いました。

映画「沈まぬ太陽」オリジナル・サウンドトラック

映画「沈まぬ太陽」オリジナル・サウンドトラック

  • アーティスト: サントラ
  • 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
  • 発売日: 2009/10/21
  • メディア: CD

沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上) (新潮文庫)

沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上) (新潮文庫)

  • 作者: 山崎 豊子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2001/11
  • メディア: 文庫
沈まぬ太陽〈2〉アフリカ篇(下) (新潮文庫)

沈まぬ太陽〈2〉アフリカ篇(下) (新潮文庫)

  • 作者: 山崎 豊子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2001/11
  • メディア: 文庫
沈まぬ太陽〈3〉御巣鷹山篇 (新潮文庫)

沈まぬ太陽〈3〉御巣鷹山篇 (新潮文庫)

  • 作者: 山崎 豊子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2001/12
  • メディア: 文庫
沈まぬ太陽〈4〉会長室篇(上) (新潮文庫)

沈まぬ太陽〈4〉会長室篇(上) (新潮文庫)

  • 作者: 山崎 豊子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2001/12
  • メディア: 文庫
沈まぬ太陽〈5〉会長室篇(下) (新潮文庫)

沈まぬ太陽〈5〉会長室篇(下) (新潮文庫)

  • 作者: 山崎 豊子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2001/12
  • メディア: 文庫

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コメント 8

ぷーちゃん

御巣鷹山のような悲惨な事故が、
2度と起きないように希望します。
航空会社と言えば、昔は、高給で花形産業
だったのに最近は、営業環境も
厳しいようですね。時代は変わるもんです。

by ぷーちゃん (2009-09-21 17:43) 

duke

興味深い映画です!
ナイロビ。。左遷である、という事は読むまでわかりませんでしたが・・・・
商売をやってるところは購買力のあるところがスターダム、ということなんでしょうね。
でも、やっぱり「そんなところ」みたいに思う人はいて、同じ地球なのにな、とすごく思います。
by duke (2009-09-21 19:53) 

nomame

山崎豊子作品で3時間22分とは、
相当なウェイトみたいですが、同じくらい興味深いですね。
絶対観にいきたいです。
by nomame (2009-09-24 21:40) 

DSilberling

この映画に描かれている問題がいまだに続いていて、遂にJALは経営危機に追い込まれています。
偶然とはいえタイムリーな公開時期ですね。
by DSilberling (2009-09-25 13:41) 

たいちさん

大作の映画化ですね。長時間映画でも長さを感じないとのこと。是非観たい映画の一つですね。
by たいちさん (2009-09-28 14:11) 

naonao

>nice!をくださった皆様、ありがとうございます。

>ぷーちゃんさん、ありがとうございます。
本当に時代が変われば花形産業も変わりますね。
JALは今、脚光を浴びてますね。
一体どうなるでしょうか?

>dukeさん、ありがとうございます。
本当は優劣ないんですけどね。ただそこに違いがあるだけですね。

>nomameさん、ありがとうございます。
すごく内容のあるみせる映画でした。
そして何より面白かったです。

>DSilberlingさん、ありがとうございます。
本当にタイムリーです。
やはりチベットの埋蔵経典のようです。

>たいちさん、ありがとうございます。
出ている役者さんたちも、脇役であっても実力ある俳優さんたちばかり。必見です。
by naonao (2009-10-02 19:36) 

Betty

とても見応えのある映画に仕上がっているようですね!
原作は御巣鷹山編と会長室編を読みました。
現実の厳しさと汚さを、これでもかと抉り出した内容に読後、虚脱感を覚えたのを思い出します。恩地氏と国見会長の真直ぐな人柄に何度も熱くなりました。

ここまで長い映画は朝から飲料水の制限をしないといけないようです^^;
by Betty (2009-10-05 13:57) 

naonao

>Bettyさん、ありがとうございます。
きっと原作も素晴らしいのでしょうね。
未だ読んでいず・・・(汗)
長くても素晴らしいので全く飽きることがありませんでした。
インターバルがある映画なんて今回初めてでしたが、いいかもしれませんね。
by naonao (2009-11-05 21:18) 

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