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あん [日本映画 ドラマ]

河瀨直美監督、ドリアン助川原作、樹木希林主演の映画「あん」を観ました。



あん Blu-ray スペシャル・エディション

あん Blu-ray スペシャル・エディション

  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • 発売日: 2016/03/16
  • メディア: Blu-ray

グーグルでの評価満足度が91%とあり、どんな作品なのだろうとお気楽に観ていましたが、結構ずしりと胸に来る人生を考えさせられる映画でした。

桜が満開の季節に、ふらりと訪ねてきたあんこ作りの得意な徳江(樹木希林)が、どら焼きやの店主(永瀬正敏)に自分を雇ってほしいとお願いし、徳江は雇われ彼女の作るあんこのお陰で店が繁盛するのもつかの間、徳江がハンセン病だとの噂が広まり店にお客が来なくなります。徳江も店に来なくなり、どら焼きやの店主と店に通っていた中学生のワカナ(内田伽羅)は彼女を訪ねるのです。そして2度目に訪ねたときには既に彼女はこの世を去っていました。


影のある人生に失敗して半ば投げやりになっている店長役の永瀬正敏の演技も良かったし、勿論徳江役の樹木希林は文句なしに素晴らしかったです。中学生の内田伽羅って誰?と調べたら、樹木希林の孫(つまり本木雅弘、もっくんの子供)であることがわかりました。樹木希林と仲の良い浅田美代子も出ていたし、市原悦子も出ていて皆うまかったです。


映画の中で映る桜が印象的でそしてまた格別美しかったです。「働けて楽しかったよ、店長さん」と何度も繰り返し徳江がいう言葉に自然に涙が溢れました。ハンセン病なので隔離され外で働くことなど許されず、70半ばになって初めて外で働き、その喜びに溢れているのです。働けて当たり前、いやむしろ働くことに時々半ば嫌気が刺している自分にとっては突き刺さる言葉でした。ハンセン病はライ病とも言われて、インドを旅行していた1990年代にたくさんのライ病患者を見ました。インドでは人目につかないように隔離することなくそのままで、乞食の中にたくさんのライ病患者がいました。指がない、鼻がない、足がないので胴体をコロコロの着いた板の上に乗って移動してます。初めて見た時は衝撃的でした。彼らは近づいてきて施しを求め、インドの人たちはお金を普通に彼らに恵みます。多くの旅行者もそれに習い、私もそれに習いました。


また「私たちはこの世を見るため、聞くために生まれてきた。この世はただそれだけを望んでいた。だとすれば、何かになれなくても、私たちには生きる意味があるのよ」という言葉がとっても良かったです。

つい最近、Eテレでやっている「猫のしっぽ、カエルの手」という番組のベニシアさんが、イギリスの貴族を離れてアイルランドへ移って暮らしていた亡くなった母の家を訪れている番組を観ましたが、ベニシアさんのエッセイの中に、人生の中に何に価値を置くかみたいなものがあり、それは何者かになれたとか偉大なことを成し遂げたとかそういうことでなく、どれだけ自分に満ち足りて幸せであったか、そういうことに価値を置きたいという言葉に触れたばかりだったので、映画の徳江の言葉とベニシアさんの言葉に共感できるなあと思いました。


桜の咲くこの時期、この映画はお勧めです。

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コメント 2

naonao

>nice!をいただき、皆様ありがとうございます。
by naonao (2020-03-20 21:35) 

U3

二度見ました。
by U3 (2020-03-20 21:36) 

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