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ミスター・ノーバディ [タイムスリップ・パラレルワールド映画]

2009年のフランス・ドイツ・カナダ・ベルギー合作映画「ミスター・ノーバディ」を観ました。



ミスター・ノーバディ [DVD]

ミスター・ノーバディ [DVD]

  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2012/10/25
  • メディア: DVD

難しい、でも面白い、深い映画でした。この映画の解釈は人によってまちまちだろうなあと思いました。もう一度、いや何度か観直してこの映画の解釈をいろいろ考えてみたくなる、そんな映画でした。


2092年の話。既に科学技術が進歩して死というものが無くなっている世界にあって、死を迎えようとする最後の人間となった118歳の主人公のニモ。彼がどんな人生を送ったのが、医師の催眠術や、記者のインタビューで彼の人生を探ろうとします。しかし、9歳のときに父母が離婚したときに、父について行った人生を語り、また母について行った人生を語りだします。そして父について行ったがために出会った女性との恋愛、結婚もいくつかに分かれ、また母について行ったがために出会った女性との恋愛も、うまくいってる感じとそうでない感じに分かれ、一体どの彼が本当の彼だったのか、見ているこちらまでわからなくなるのです。彼が就いた職業も枝分かれした人生に応じて科学者やら水道管屋さんやら浮浪者やら…と様々で、このニモの人生は一体何だったのか?とても不思議な世界に迷い込むことになります。


パラレルワールド、ということなのでしょうか。選ばなかった人生もまた存在して、自分の分身がまた違った人生を体験しているのでしょうか。


人生で選択することはたくさんあって、あの時こちらの道を取らずあちらを取っていたら違っていただろうと、よく言います。でもどちらを取っても結局のところ今の場所にいる、という人もいます。でもとにかく人生はどれかを選ばなければ進んでいきません。

必ず何かを選択して年を取って人生の駒を進めます。ただ、選ばなければ可能性は無限大です。だから子供の人生は無限です。選び取っていない、これから選ぶからです。


映画の中で、主人公のニモがこの世に出てくる前に、たくさんの子供たちと一緒にこの世のこと、自分の人生を見せられ、ただ誕生直前に天使が子供の口に指をあてその記憶を失くすのですが、ニモだけがそれを忘れられてしまったようでした。だから自分の選択によってこんな人生がある、こんな人生もあるよ、と覚えていて、本当はその中の最も自分の好きな人生のひとつを送ったのかなあと思います。最後亡くなる前に、最も人生で愛した女性の名前「アンナ」の名前を叫んで死ぬのですが、アンナとの人生を選ぶように人生の分岐点でもそのようにしたのかもしれません。よくわからないですが。


最後のほうで118歳のニモが、こう語ります。

「私が生きた道はどれも真実だ。

どの道も正しい道だった。

人生には他のどんなことも起こりえただろう。

それらには同等の意味があったはずだ。

テネシー・ウィリアムズだ。

年を取ったらわかるはずだ」

こんな言葉を残しています。


どんな道を選んでも本当は何も変わらないのかもしれません。つまり経験できるという点で、どの経験も大切だから。テネシー・ウィリアムズのどの小説でこの言葉が語られているのかも、気になるところですが、時間があったら小説を読んで探してみたいです。


またバタフライエフェクトを映像で見せ、枯れ葉が子供のニモに瀕死の重傷を負わせたり、車がスリップして車ごと湖の中に入ってしまったり、最後は父母を選ぶときにニモが枯れ葉を飛ばしてみせることをやってみたりしています。ニモが枯れ葉を飛ばすことは、もしかしたら誕生前に見せられた人生でない違う人生を選ぼうとしたニモがいたのかもしれないとふと思いました。


科学者らしいニモが映像の前で、エントロピーやビックバン、ビッククランチなども説明していきます。


この映画を観ていると人生は可能性に溢れている、幸も不幸も色んなものが混ざってどんな人生もアリだよ、と言っているかのようです。世界旅行をしていた時に感じた人生の可能性、何でもいいじゃないかと思えた同じような感情を今、思い起こしました。


[ぴかぴか(新しい)]P.S.[ぴかぴか(新しい)]

今テレビでやっている「いいね!光源氏くん」こちらもタイムスリップもの。光源氏が現代にやって来て感動するとところ構わず和歌を詠む。光源氏役の千葉雄大くんの可愛さに加え、平安貴族ならではの所作も優美でほれぼれ。OL役の伊藤沙莉ちゃんとのコンビネーションもいい。タイムスリップの物語は楽しい~。

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空飛ぶ広報室、コウノドリ [日本ドラマ]

コロナウィルスの影響で仕事が半減。ヒマヒマです。

そこで昔のドラマやら映画をチェック。以前「逃げ恥」を観て新垣結衣や星野源が気になっていたので、「空飛ぶ広報室」と「コウノドリ」を観てみました。


「空飛ぶ広報室」にはガッキーが、「コウノドリ」には星野源が出ていたので観たのですが、両方とも感動もので素晴らしく、時に泣けて申し分ないドラマでした。どちらにも偶然綾野剛が出演していました。


空飛ぶ広報室 Blu-ray BOX

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  • 出版社/メーカー: TCエンタテインメント
  • 発売日: 2013/11/29
  • メディア: Blu-ray
2013年のドラマ。有川浩原作。

テレビ局の報道を熱望するも外されバラエティ班に回されるディレクターの稲葉(新垣結衣)と、事故でパイロットの夢が断たれ広報に回された航空自衛隊の空井(綾野剛)。大きく挫折した二人がそれぞれに新しい居場所で新しい夢を見つけそこに向かって舵を切り成長していく物語です。二人の恋の行方も気になるドラマ。上司役の柴田恭兵がとってもいい味出しています。他に水野美紀、要潤も。

爽やかで素敵なドラマで、最後は泣けました。今まで綾野剛を意識して見てなかったけれど、このドラマで何か素敵だなあと意識するようになりました。



コウノドリ Blu-ray BOX

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  • 出版社/メーカー: TCエンタテインメント
  • 発売日: 2016/03/25
  • メディア: Blu-ray
コウノドリ SEASON2 Blu-ray BOX

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  • 出版社/メーカー: TCエンタテインメント
  • 発売日: 2018/03/28
  • メディア: Blu-ray


コロナウィルスの影響で、「コウノドリ傑作選」も先週からテレビで放送(今日も放送)されていますが、このドラマは泣ける。

2015年、2017年のドラマ。星野源を観たくて観た「コウノドリ」ですが、結果的には鴻鳥サクラ役を演じた綾野剛にクラクラしてしまいました。患者に寄り添う心優しき産科医。穏やかな口調でその言葉掛けや返答がどこまでも優しくてメチャクチャ素敵で惚れてしまいました。彼が弾くピアノも素晴らしく、この楽曲がとっても気に入りました。(綾野剛は相当ピアノを練習し習得したらしいですがその成果がドラマにも現れています)。個性ある吉田羊、松岡茉優、大森南朋、坂口健太郎、宮沢氷魚なども出ていて、毎回毎回泣けて泣けて泣きながら次々観てしまいました。命の尊さ、その奇跡、生と死を考えさせられます。お産にまつわる様々な病気、リスク、その人個人の事情、またドクターたちの事情も絡んで、感動ものでした。

特にシーズン2の最終回、ダウン症の子供を扱った回では、エミリー・パール・キングスレーの「オランダにようこそ」というエッセイが紹介されます。そのエッセイはこちら→http://www.jdss.or.jp/tane2017/JDS2019-tane_page28_29_protected.pdf


<行きたいとワクワクしていたイタリアには行けず、ついた先はオランダ。ここにいなければならない。でも到着した場所がちょっと違っていた。イタリアに行けず失望が大きいのはわかるけど、嘆いていたらいつまでたっても本当のオランダを楽しむことはできない…>ダウン症の子供はこんな感じだというエッセイ。最終回ではこのエッセイも相まって泣きどころ満載。毎回涙だけど、シーズン2の最終回は特に素晴らしかったです。このエッセイは与えられた状況の中でいかにたくましく楽しく生きていくのか、人生のあらゆる場面でも力をもらえるエッセイだと思いました。


考えてみれば2014年にキネマ旬報の授賞式に呼ばれて観に行ったことがあり、その年の外国映画受賞作品「ジャージーボーイズ」(クリント・イーストウッド監督作品)だけを観て帰ってきたのですが、その後綾野剛主演で受賞作品「そこのみにて輝く」を上映し、彼本人が登壇して受賞式も予定されていましたが、長丁場だったので遠慮して帰ってきてしまいました。今思うと勿体ないことをしたなあと思います。生の綾野剛を観れるチャンスでもあったのに。でもその当時は全然ファンでも何でもなかったので、仕方ないのですが。


ガッキー見たさに、星野源見たさにたどり着いた2本のドラマ。たまたま綾野剛も出ていて、今はにわか綾野剛ファン。また綾野剛を追えば何かにたどり着けるはず。こんな風に見逃した秀逸なドラマを辿り観ていくのもまた良しです。


以下、コウノドリのテーマ曲(2015年) Baby,God Bless You  とコウノドリのシーズン2のテーマ曲(2017年) For Tomorrow。Youtubeから拾って久々に貼ってみます。曲を作曲したピアニストの清塚信也さんの演奏にて。楽曲が素晴らしく聴いているだけで泣けてきます。






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もっと猟奇的な彼女 [チヤ・テヒョンChaTae-hyun車太鉉]

「もっと猟奇的な彼女」を観ました。


もっと猟奇的な彼女 [DVD]

もっと猟奇的な彼女 [DVD]

  • 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • 発売日: 2017/04/26
  • メディア: DVD

2001年の「猟奇的な彼女」の続編との触れ込みで、こんな作品が公開されていたとはつゆ知らず。大好きだった「猟奇的な彼女」とそれに出演していたチヤ・テヒョンがこの「もっと猟奇的な彼女」にも出ているということで、すごい発見をしたとワクワクしながら観ました。しかし…残念でかなりガッカリな作品でした。


16年も経っているのにチヤ・テヒョンは相変わらずひょうきんで少しも変わっていず。何だかとっても若い。「猟奇的な彼女」の時のままとは言い過ぎだけど、16年も経ったとは思えないほど違和感なく。ただストーリーも作りも安っぽくとてつもなくB級映画で途中で見るのを止めようかと思ったほど。監督も脚本も変われば当然違うのはわかるのですが、「猟奇的な彼女」の続編のようなネーミングを使ってほしくないと思うほどの出来でした。お相手の女性(ビクトリア F(X))は可愛らしかったけど、「猟奇的な彼女」のチャン・ジヒョンのほうが何倍も魅力的だったなあと思い出します。そういえば、アメリカ版の「猟奇的な彼女」も観たことがあったけれど、これも全く別物だったことを思い出しました。


唯一この作品を観て良かったなあと思えたのは、お相手の女性が中国麗江(リージャン)の出身という設定で、麗江まで出かけていってその上トンパ文字が出てくること。それがメチャクチャ懐かしかった。麗江はとっても素敵な街だったし、トンパ文字もその文字を見せてもらったことを思い出しました。


一時期チヤ・テヒョンが大好きでいろいろ見てたけど、急に映画にあまり出なくなってそのうち追わなくなり忘れて、そしてまたふとこんな形でまた発見し再会してワクワクドキドキして…。まあ、その時間が楽しかったから良しとしましょう。どうしても続編は1作目を超えられないので、期待してみる方がダメなのかもしれませんが、この作品は本当にありえなかったです。


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幸せは自分の中にある、ベニシアの京都里山日記、ベニシアの庭づくり、隠れた花 [本]

最近まで読んでた本です。


この1,2年観ているEテレの「猫のしっぽ、カエルの手」。再放送のようで10年前とか、4,5年前とかの放送を流しているようですが、少しも古さを感じさせない番組で、今の私にとってはこの番組が一つの癒しのようになっています。特に番組の中で披露されるベニシアさんのエッセイが好きで本など出版してないだろかと調べたら、エッセイに限らず彼女の本がいろいろ出版されていることがわかりました。



幸せは自分の中にある ベニシア、イギリス貴族の娘。 (Venetia’s story 1)

幸せは自分の中にある ベニシア、イギリス貴族の娘。 (Venetia’s story 1)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/02/24
  • メディア: 単行本

これはベニシアさんの幼少期の様々な思い出を綴ったもの。母が奔放で、4回結婚をして、そのため父親が4人もいるというベニシアさん。家庭環境がとっても複雑です。しかも曾祖父の兄が「ダウントン・アビー」のモデルとなったという由緒正しき貴族の出でもあるといいます。母親との確執、小さなころから貴族に馴染めないことが綴られ、実の父が早い時期に亡くなり、同時期にとっても仲が良く頼りにしてた3番目の父親と母が離婚してしまい、その後心の支えでもあった乳母のディンディンもいなくなり、幼かったベニシアさんは暗闇の中へと放り出されてしまいます。


ちょうど本を読む少し前にEテレの中で、ベニシアさんが、イギリスに帰国し母の実家のケドルストンホール(今はナショナルトラスト管理で、一画だけいとこらしき人が住んでいた)や親しかったアンおばさんの今はもう他の建物が建っている場所や、アイルランドに移住した亡き母親の家に行ったり、たくさんの親戚と会ったり、そのうちでも特に親しい異父姉妹のルシンダさんの家に遊びに行ったりした番組を観たのですが、本を読んでる時にああ、あの映像のことかと、実にタイムリーでした。また逆に番組の中でちらりと自分の生い立ちを話していましたが、本を読むことで更により複雑な家柄に生まれたかがわかり、ただただびっくりでした。でもまだ救われるのは、母とは折り合いが合わなくても母と結婚した父たちとは比較的仲良しで、そして自分の実の父の再婚相手となった女性とも仲がよく、また乳母のディンディンとかアンおばさんとか心を許せた大人が周りにいたことでした。それでも仲の良かった人との別れがあり、人生で幸せとは何かを求めインドなど放浪した後、日本にたどり着きます。お金があるだけでは幸せにはなれないと身を持って体験している人で、貴族は貴族なりの格式があり、なかなか難しいものもあるんだなあとこの本からも読みとれます。彼女の人生、何だか映画になるくらいの波乱万丈な人生だと思いました。



NHK 猫のしっぽカエルの手 ~京都 大原 ベニシアの手づくり暮らし~ (e-MOOK)

NHK 猫のしっぽカエルの手 ~京都 大原 ベニシアの手づくり暮らし~ (e-MOOK)

  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2016/08/29
  • メディア: 大型本

たくさんの写真とともに、ベニシアさんが住む京都大原の古民家暮らし。たくさんの草花のある庭、ハーブを使った料理のレシピ、ハーブを使った石鹸やら軟膏、うがい薬の作り方など、Eテレの番組に沿った内容が。パラパラと見ているだけでも楽しいです。


ベニシアの京都里山日記 大原で出逢った宝物たち

ベニシアの京都里山日記 大原で出逢った宝物たち

  • 出版社/メーカー: 世界文化社
  • 発売日: 2014/01/10
  • メディア: Kindle版

ベニシアさんのエッセイ。旦那さんが撮った美しい写真、ベニシアさんの挿絵もたくさん入ってます。いつも番組で短いエッセイが流れるとき、素敵な音楽と相まって時々あまりにもその言葉が心に響いて涙することがあり、この本もそんなエッセイがたくさん載っているのかと期待しましたが、そうではなかったです(残念)。でも彼女の生い立ち、イギリスのこと、イギリスの習慣のこと、日本に来て知り合った人たちや、日本での生活やら気づき、子育てのことなど多岐にわたるエッセイで、中にはやはりEテレに出てきた日本のお母さんに当たる人とか、旦那さんと一緒に山登りすることとかテレビ番組とリンクすることもあり読んでいて楽しかったです。


ベニシアの庭づくり ハーブと暮らす12か月

ベニシアの庭づくり ハーブと暮らす12か月

  • 出版社/メーカー: 世界文化社
  • 発売日: 2013/12/11
  • メディア: 単行本



月ごとにハーブを載せ、そのハーブの育て方、ハーブを使っての料理の仕方、ハーブを使った有効利用法などを写真と挿絵一杯に載せています。写真はいつも通り旦那さんで、挿絵はベニシアさん。種類がたくさん載っていてハーブの辞典としても大活躍しそうです。

Eテレの番組の題名となっている「猫のしっぽ、カエルの手」って何だろうといつも思っていたのですが、その疑問が解けました。Bristle Grass and Maple Leavesという題名のエッセイが載せてあり、これは「ねこじゃらしとカエデの葉」のことでした。ねこじゃらし(エノコログサのこと。犬の尾に似てるので犬ころ草とも言う)を猫のしっぽと言っていて、カエデの葉(カエルの手に似てるところからカエデになった)をカエルの手と言っていたのでした。

月ごとのエッセイがまた素敵で、「幸せは自分の中にある」の本を埋めるような子供の頃のエピソードやその時その時の出来事、庭との関わり方、人生の対処の仕方を考えさせてくれるエッセイでした。私の好きなパウロ・コエーリョの引用やらインドのデラドュンの地名など懐かしいものも入っていました。曾祖父の兄という人がインド総督であり、外交官であり、政治家であり、ナショナルトラストにも関わっていて、何やらすごい人であることがますますわかったのもこの本からでした。「ダウントン・アビー」観てみたいなとも思いました。



私の見た日本人

私の見た日本人

  • 出版社/メーカー: 国書刊行会
  • 発売日: 2013/03/01
  • メディア: 単行本

パール・バックの筆なら何でも読みたいと思って読んだ「終わりなき探求」「大地」に続いて読んだ本。これは中国から疎開して2,3年日本に住んで彼女が見た1960年代の日本人の観察記。その当時の写真も載っていて、日本の女性や家族制度、芸者、人情、しつけ、義理、宗教、偏見、祭り、娯楽などなど色んなことを洞察し述べている。ちょっと違うんじゃないの?と感じた部分もあったけれど、良く調べているし、当時これだけのものを書ける外国人はいなかったのかもしれないと思うと、脱帽です。


隠れた花

隠れた花

  • 出版社/メーカー: 国書刊行会
  • 発売日: 2014/02/27
  • メディア: 単行本

日本が敗戦し、連合国占領下にあった時代のアメリカ人将校と日本人女性の結婚を描いています。州によってはまだ白人が有色人種との結婚は許されておらず、日本の親にもアメリカの親にも歓迎されず、現実がじわじわと二人を苦しめ行場を無くします。戦争花嫁、人種差別、混血児の問題を突き付けている作品です。


普通の日本人と違い、15歳までアメリカに住み、日本に来てたった5年。アメリカの生活のほうが生きやすいであろう主人公の如水。その彼女でさえ実際に彼と共にアメリカに戻り生活を始めると疲れ始め、最後は「彼を愛してはいるが、もうこれ以上生活を続けることはできない」と日本の元婚約者に言葉を吐きます。彼女の最後の受け皿は心優しき元婚約者。彼女が家を出てしまってもアメリカ人の彼は彼女を追わず、実家に戻ったまま。その時妊娠していた如水の子供は、最終的にドイツ人医師が親となって育ててくれることになり、明るい光が見えてきます。


パールバックの筆による物語は本当にどんどん読めてしまいます。面白かったです。こんなにも彼女の書いたものが好きになるとは思いもしませんでした。

また日本のお見合い制度はそんなに悪いわけでもないんだなあと思いました。恋愛と結婚は別物、育った環境などが同じでなければ結婚は破たんしやすくなる、周りの理解がないところにはなかなか幸せはない、そんなことをあらためて思いました。若い時にこの本を読めば恋愛結婚が理想と思え主人公の如水の目で物事を見るでしょうが、年取った今だからこそ、そんな恋愛結婚に親が反対するのは尤もで、それは世間を良く知っているから、子供に辛い思いをさせたくない、その一心なのだという親目線になってます。でも人生は何でも経験ですから、やりたいことをやって失敗し痛い目に遭ったほうがいいのかもしれません。若い時は怖いものを知らない、だからこそ向こう見ずでいられそれが若さの特権ですが、年を取ると、危険を回避し安全な方へと舵を切りたくなります。


時代は国際結婚も混血児もほとんど歓迎されていない時代。そんな時代がつい最近まで続いていたことを思うと、その時代にあった当事者の人たちのやりきれなさは本当に切ないです。今だって色んな考え方、生き方に時に寛容でない世間があり、もっと開けた世界になったらいいなあと思ったのでした。

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