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幸せは自分の中にある、ベニシアの京都里山日記、ベニシアの庭づくり、隠れた花 [本]

最近まで読んでた本です。


この1,2年観ているEテレの「猫のしっぽ、カエルの手」。再放送のようで10年前とか、4,5年前とかの放送を流しているようですが、少しも古さを感じさせない番組で、今の私にとってはこの番組が一つの癒しのようになっています。特に番組の中で披露されるベニシアさんのエッセイが好きで本など出版してないだろかと調べたら、エッセイに限らず彼女の本がいろいろ出版されていることがわかりました。



幸せは自分の中にある ベニシア、イギリス貴族の娘。 (Venetia’s story 1)

幸せは自分の中にある ベニシア、イギリス貴族の娘。 (Venetia’s story 1)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/02/24
  • メディア: 単行本

これはベニシアさんの幼少期の様々な思い出を綴ったもの。母が奔放で、4回結婚をして、そのため父親が4人もいるというベニシアさん。家庭環境がとっても複雑です。しかも曾祖父の兄が「ダウントン・アビー」のモデルとなったという由緒正しき貴族の出でもあるといいます。母親との確執、小さなころから貴族に馴染めないことが綴られ、実の父が早い時期に亡くなり、同時期にとっても仲が良く頼りにしてた3番目の父親と母が離婚してしまい、その後心の支えでもあった乳母のディンディンもいなくなり、幼かったベニシアさんは暗闇の中へと放り出されてしまいます。


ちょうど本を読む少し前にEテレの中で、ベニシアさんが、イギリスに帰国し母の実家のケドルストンホール(今はナショナルトラスト管理で、一画だけいとこらしき人が住んでいた)や親しかったアンおばさんの今はもう他の建物が建っている場所や、アイルランドに移住した亡き母親の家に行ったり、たくさんの親戚と会ったり、そのうちでも特に親しい異父姉妹のルシンダさんの家に遊びに行ったりした番組を観たのですが、本を読んでる時にああ、あの映像のことかと、実にタイムリーでした。また逆に番組の中でちらりと自分の生い立ちを話していましたが、本を読むことで更により複雑な家柄に生まれたかがわかり、ただただびっくりでした。でもまだ救われるのは、母とは折り合いが合わなくても母と結婚した父たちとは比較的仲良しで、そして自分の実の父の再婚相手となった女性とも仲がよく、また乳母のディンディンとかアンおばさんとか心を許せた大人が周りにいたことでした。それでも仲の良かった人との別れがあり、人生で幸せとは何かを求めインドなど放浪した後、日本にたどり着きます。お金があるだけでは幸せにはなれないと身を持って体験している人で、貴族は貴族なりの格式があり、なかなか難しいものもあるんだなあとこの本からも読みとれます。彼女の人生、何だか映画になるくらいの波乱万丈な人生だと思いました。



NHK 猫のしっぽカエルの手 ~京都 大原 ベニシアの手づくり暮らし~ (e-MOOK)

NHK 猫のしっぽカエルの手 ~京都 大原 ベニシアの手づくり暮らし~ (e-MOOK)

  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2016/08/29
  • メディア: 大型本

たくさんの写真とともに、ベニシアさんが住む京都大原の古民家暮らし。たくさんの草花のある庭、ハーブを使った料理のレシピ、ハーブを使った石鹸やら軟膏、うがい薬の作り方など、Eテレの番組に沿った内容が。パラパラと見ているだけでも楽しいです。


ベニシアの京都里山日記 大原で出逢った宝物たち

ベニシアの京都里山日記 大原で出逢った宝物たち

  • 出版社/メーカー: 世界文化社
  • 発売日: 2014/01/10
  • メディア: Kindle版

ベニシアさんのエッセイ。旦那さんが撮った美しい写真、ベニシアさんの挿絵もたくさん入ってます。いつも番組で短いエッセイが流れるとき、素敵な音楽と相まって時々あまりにもその言葉が心に響いて涙することがあり、この本もそんなエッセイがたくさん載っているのかと期待しましたが、そうではなかったです(残念)。でも彼女の生い立ち、イギリスのこと、イギリスの習慣のこと、日本に来て知り合った人たちや、日本での生活やら気づき、子育てのことなど多岐にわたるエッセイで、中にはやはりEテレに出てきた日本のお母さんに当たる人とか、旦那さんと一緒に山登りすることとかテレビ番組とリンクすることもあり読んでいて楽しかったです。


ベニシアの庭づくり ハーブと暮らす12か月

ベニシアの庭づくり ハーブと暮らす12か月

  • 出版社/メーカー: 世界文化社
  • 発売日: 2013/12/11
  • メディア: 単行本



月ごとにハーブを載せ、そのハーブの育て方、ハーブを使っての料理の仕方、ハーブを使った有効利用法などを写真と挿絵一杯に載せています。写真はいつも通り旦那さんで、挿絵はベニシアさん。種類がたくさん載っていてハーブの辞典としても大活躍しそうです。

Eテレの番組の題名となっている「猫のしっぽ、カエルの手」って何だろうといつも思っていたのですが、その疑問が解けました。Bristle Grass and Maple Leavesという題名のエッセイが載せてあり、これは「ねこじゃらしとカエデの葉」のことでした。ねこじゃらし(エノコログサのこと。犬の尾に似てるので犬ころ草とも言う)を猫のしっぽと言っていて、カエデの葉(カエルの手に似てるところからカエデになった)をカエルの手と言っていたのでした。

月ごとのエッセイがまた素敵で、「幸せは自分の中にある」の本を埋めるような子供の頃のエピソードやその時その時の出来事、庭との関わり方、人生の対処の仕方を考えさせてくれるエッセイでした。私の好きなパウロ・コエーリョの引用やらインドのデラドュンの地名など懐かしいものも入っていました。曾祖父の兄という人がインド総督であり、外交官であり、政治家であり、ナショナルトラストにも関わっていて、何やらすごい人であることがますますわかったのもこの本からでした。「ダウントン・アビー」観てみたいなとも思いました。



私の見た日本人

私の見た日本人

  • 出版社/メーカー: 国書刊行会
  • 発売日: 2013/03/01
  • メディア: 単行本

パール・バックの筆なら何でも読みたいと思って読んだ「終わりなき探求」「大地」に続いて読んだ本。これは中国から疎開して2,3年日本に住んで彼女が見た1960年代の日本人の観察記。その当時の写真も載っていて、日本の女性や家族制度、芸者、人情、しつけ、義理、宗教、偏見、祭り、娯楽などなど色んなことを洞察し述べている。ちょっと違うんじゃないの?と感じた部分もあったけれど、良く調べているし、当時これだけのものを書ける外国人はいなかったのかもしれないと思うと、脱帽です。


隠れた花

隠れた花

  • 出版社/メーカー: 国書刊行会
  • 発売日: 2014/02/27
  • メディア: 単行本

日本が敗戦し、連合国占領下にあった時代のアメリカ人将校と日本人女性の結婚を描いています。州によってはまだ白人が有色人種との結婚は許されておらず、日本の親にもアメリカの親にも歓迎されず、現実がじわじわと二人を苦しめ行場を無くします。戦争花嫁、人種差別、混血児の問題を突き付けている作品です。


普通の日本人と違い、15歳までアメリカに住み、日本に来てたった5年。アメリカの生活のほうが生きやすいであろう主人公の如水。その彼女でさえ実際に彼と共にアメリカに戻り生活を始めると疲れ始め、最後は「彼を愛してはいるが、もうこれ以上生活を続けることはできない」と日本の元婚約者に言葉を吐きます。彼女の最後の受け皿は心優しき元婚約者。彼女が家を出てしまってもアメリカ人の彼は彼女を追わず、実家に戻ったまま。その時妊娠していた如水の子供は、最終的にドイツ人医師が親となって育ててくれることになり、明るい光が見えてきます。


パールバックの筆による物語は本当にどんどん読めてしまいます。面白かったです。こんなにも彼女の書いたものが好きになるとは思いもしませんでした。

また日本のお見合い制度はそんなに悪いわけでもないんだなあと思いました。恋愛と結婚は別物、育った環境などが同じでなければ結婚は破たんしやすくなる、周りの理解がないところにはなかなか幸せはない、そんなことをあらためて思いました。若い時にこの本を読めば恋愛結婚が理想と思え主人公の如水の目で物事を見るでしょうが、年取った今だからこそ、そんな恋愛結婚に親が反対するのは尤もで、それは世間を良く知っているから、子供に辛い思いをさせたくない、その一心なのだという親目線になってます。でも人生は何でも経験ですから、やりたいことをやって失敗し痛い目に遭ったほうがいいのかもしれません。若い時は怖いものを知らない、だからこそ向こう見ずでいられそれが若さの特権ですが、年を取ると、危険を回避し安全な方へと舵を切りたくなります。


時代は国際結婚も混血児もほとんど歓迎されていない時代。そんな時代がつい最近まで続いていたことを思うと、その時代にあった当事者の人たちのやりきれなさは本当に切ないです。今だって色んな考え方、生き方に時に寛容でない世間があり、もっと開けた世界になったらいいなあと思ったのでした。

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