ペイン・アンド・グローリー [スペイン映画]
SPY TIME スパイ・タイム [スペイン映画]
「SPY TIME スパイ・タイム」をセルバンテス文化センターにて観てきました。
スペインの人気コミックが原作で、その30年後を描いたスペインでの話題作。アナクレイト(イマノル・アリアス)は、息子のアドルフォ(キム・グティエンス)にとってはいつも冴えない父親だったが、実はすごいスパーエージェントであることがわかる。息子アドルフォも自分の遺伝子に気づき、最後はスパイになっていく…。
もともとがコミックなので、いろんなところで笑わせてくれました。ちょっとコミカルなスパイ映画でした。父親のアナクレイトは豚を飼い、豚をミンチにしてソーセージなどにしていましたが、実はそれは仮の姿。宿敵のバルケスの対決を最後にスパイを引退しようと思っていました。しかしその息子のところに中国人の暗殺者が送りこまれ、息子は父の農場でも敵に襲われ銃撃戦に遭い、そこで初めて父親が普通の農夫ではないと気づくのです。息子アドルフォは活発な彼女(アレクサンドラ・ヒメネス)に振られたばかりでしたが、小さなときから知らないうちに父からの特訓を受けていて、それを自然にマスターし父と同じスパイとしてやっていける能力に気づき、元気を取り戻していきます…。
スペイン人なら誰もが「アナクレイト」というとわかるそうです。その国民的スパイの30年経ったその姿を映画化したのですから、スペイン中が熱狂したことは容易に想像できます。気晴らしに観るのには楽しい映画でした。007やボーンと比較してはちょっとかわいそうなくらい間が抜けてるのですが、これはこれで違ったテイストの肩の張らない映画でした。
日輪の遺産・ペーパーバード~幸せは翼にのって・ドライブアングリー3D [スペイン映画]
この1ヶ月で、3本の試写会に行ってきました。
「日輪の遺産」
角川本社の試写会室で観て来ました。
公式映画サイト:http://www.nichirin-movie.jp/
原作は浅田次郎の「日輪の遺産」。監督は「半落ち」の佐々部清監督。堺雅人、中村獅童、福士誠治、ユースケ・サンタマリア、八千草薫が出演。
昭和20年8月10日、帝国陸軍の真柴少佐(堺雅人)は、陸軍が奪取した900億円ものマッカーサーの財宝を陸軍工場へ移送し隠匿せよと密命を受ける。その財宝は、敗戦を悟った軍上層部が祖国復興を託した軍資金だった。真柴は小泉中尉(福士誠治)や望月曹長(中村獅童)、そして勤労動員として呼集された野口先生(ユースケ・サンタマリア)とその生徒20人の少女たちとともに任務を遂行するが……。
この物語は本当に悲しい物語でした。機転の利く少女が、「任務を終えたら薬を飲んで死んでもらうよう」指示された手紙を発見し、ほかの皆に呼びかけ集団自殺するのです。手紙をもらっていた真柴はあまりにもこの指令がむごいので上司に掛け合いその指令を撤回してもらいに出かけましたが、司令部自体が既に無くなりその指令自体が無効と判断、そのまま先生と少女たちに帰ってもらおうとしていました。でもタッチの差で先生と19人の少女は亡くなっていたのです。残されたのはお風呂掃除をしていた一人の少女でした。それ以降一人生き残ってしまった少女は、望月曹長と結婚することで、他の誰にも話さない状況を維持するのです。夫が倒れ、当時の真柴の手帳が出てきたことで、孫娘たちにその当時のことをポツリポツリと話し始める形でこの物語は始まります(この少女がおばあさんとなり八千草薫が演じました)。
少女たちの健気な姿に涙が溢れました。お国のためと一生懸命働き、その間出された白いおにぎりを家族の誰かに食べさせてあげたいと切に願い、意味も良くわからず軍歌を明るく歌いながら、懸命に任務を全うする。そして死んでいったのです。また一人残った少女(のちの八千草薫)の人生はどれほどのものなのかも考えるだけでつらいです。考えてみればつらくない人など誰もこの時代にはいないのだと思いました。当時の少女たちを生かそうと奔走する真柴も、残った少女と結婚した望月も、小泉も(大蔵省の逸材で戦後処理を巡り対立。のちにマッカーサーの前で銃自殺)そして少女たちを引率し一緒に死んだ先生も、それぞれがこの時代一生懸命生きたけれど、この戦争によって命を奪われ、大切なものを奪われました。
戦争はいろんな形でドラマとなり映画となってますが、市井の人たちがいろんな形で犠牲となり、これ以上むごいことはないのだといつも思います。泣けて泣けて仕方のない映画でした。
おまけ:
浅田次郎曰く、この「日輪の遺産」は「地下鉄(メトロ)に乗って」と双子の兄弟ような作品で、「日輪の遺産」の中の一部を切り取って拡大した部分が「地下鉄に乗って」に生まれ変わったとのこと。実質的なデビューが「地下鉄に乗って」で、実際には「日輪の遺産」が先に完成しているけれど、刊行も映画化も弟分の「地下鉄に乗って」のほうがいつも先だ、というようなことを書いています。
「地下鉄に乗って」は戦時下や戦後、昭和の時代にタイムスリップしてしまう話でこちらもストーリーテラーの浅田次郎作品らしい映画でした。ただ映画はちょっとタイムスリップがありすぎた感がありますが・・・。でも面白いです。
「ペーパーバード~幸せは翼にのって」
公式映画サイト:http://www.alcine-terran.com/paperbird/
Pajaros De Papel/ Paper Birds (Caleidoscopio)
- 作者: Zoraida Vasquez Beveraggi
- 出版社/メーカー:
- 発売日: 2006/06/14
- メディア: ペーパーバック
Drive Angry [Blu-ray] [Import]
- 出版社/メーカー: Summit Entertainment
- メディア: Blu-ray
地下鉄(メトロ)に乗って THXスタンダード・エディション [DVD]
- 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
- メディア: DVD
チェ 28歳の革命 [スペイン映画]
新年明けて初めて観た映画は「チェ 28歳の革命」です。有楽町朝日ホールで観てきました。
映画公式サイト:http://che.gyao.jp/
映画が始まる前にオードリーがお笑いを披露したのですが、笑いは今ひとつ。この映画にお笑い芸人が呼ばれて芸を披露する意味が全くわからなかったです。
この映画は「オーシャンズ11・12・13」「さらばベルリン」のスティーヴン・ソダーバーグ監督作品。主演は2008年カンヌ国際映画祭で見事主演男優賞を受賞したベニチオ・デル・トロ。25キロの減量と7年にも渡るリサーチの末、この役に挑んだとのことで、本当にトロがチェ・ゲバラに見えてきます。まるで生き写しのよう。「愛の讃歌」でエディット・ピアフ役を演じたマリオン・コティヤールのようです。
映画はチェ・ゲバラが1955年フィデル・カストロと出会い、翌年一緒にキューバに出発。キューバ政府軍と戦うゲリラ軍の一員となり1958年にサンタクララの戦いで勝利するもそのまま首都ハバナに向かうまでを描いています。それと同時に1964年のニューヨーク国連本部での演説や、マスコミのインタビューなどを交え映画は進行します。
映画はゲリラの日々を描いてるためにエンタメ的な要素がなく、途中退屈に感じられたりもしましたが、チェ・ゲバラが喘息持ちであり、農民に敬意を払い、女子供を守り、規律を崩すものにはとことん厳しく銃殺をもいとわない残虐な部分も見せますが、敵味方なく負傷者の医療行為を行い、看護し温かい言葉をかけ、また兵士に読み書きを教えたり、熱い理想に燃え・・・といった面をさりげなく見せています。監督がインタビューの中で「チェという人間と一緒にいること、それはどんな感覚だったのかを味わってほしい」と言っていますが、その意図はこの映画で見事に達成されています。
チェ・ゲバラの「チェ」とは名前でなくあだな。アルゼンチンでは「ねえ、君」といったような親しみをもった言葉で、アルゼンチン人であったゲバラが今もってラテン世界では「チェ」とか「エル・チェ」と親しみをもって呼ばれているそうです。
ゲバラはアルゼンチン大医学部在学中に友人と2人で南米の放浪の旅に出ており、それを描いたのが「モーターサイクル・ダイアリーズ」(ロバートレッドフォード監督作)という映画らしい。ゲバラ自身その時の様子を書いた本も残っています。私も放浪の旅をしていた端くれとして、ゲバラの放浪癖(何でも見たい体験したいという好奇心)に共感を持っています。もちろん生き方にも。この映画も観たいし、本も読みたいです。
この「チェ 28歳の革命」の続編にあたる「チェ 39歳別れの手紙」もあるとのこと。ボリビアでの死までを描いた作品なのでしょうが、こちらも機会あれば観たいです。今年はキューバ革命50周年記念にあたる年なので、チェ・ゲバラが脚光を浴びる年になるでしょう。これを機会に彼に関する本も山ほど出てるので読んでいきたいです。
チェ 28歳の革命 (ベニチオ・デル・トロ 主演) [DVD]
- 出版社/メーカー:
- メディア: DVD
ボルベール [スペイン映画]
映画公式サイト:http://volver.gyao.jp/
スペイン映画「Volverボルベール(帰郷)」観てきました。劇場招待券を頂き、有楽座にて。ペネロペ・クルス主演映画です。彼女の映画はハリウッド映画「バニラ・スカイ」と「サハラ」しか観てないのですが、この映画「ボルベール」はスペイン映画なのでスペイン語を使いスペインで撮ってるためか、彼女の本領が十二分に発揮され、ほかの映画と比べるとすごく存在感があり、生き生き、伸び伸び演じているように感じました。
映画は女の物語。誰かも書いていたのですが、この映画を観ていてフランス映画の「女はみんな生きている」を思い出してしまいました。女がとにかく力強く生きてる感じ。たくましいなあと思いました。次から次へといろんなことが日常に起きます。ある日娘がぐうたらな父親に犯されそうになり、娘が父親を殺してしまい、そのことを知ったペネロペ演じる母親が何とかその死体を始末しようとします。そしてそのあと親しい叔母が亡くなり葬式があり、幽霊の話で通夜が盛り上がります。また姉が勝手に叔母の服やら貴金属を持ってきていると誤解しガッカリしますが、実は姉のところに亡くなったはずの母親が生きて戻り、実の母がしたことだとわかります。母親とのわだかまりがあったのですが、そこには深刻な事実があり、ショッキングな出来事が絡んでいるという話で、とにかくそれでも女たちが何とかたくましく生きていくという物語でした。
ペネロペがトイレで用を足す場面や、おならの話、ぐうたらでいやらしい父親の目線で追う娘への目などグロテスクでちょっと悪趣味な感じのところもあり、観ている途中で嫌な気分になりましたが、全体として観ると、それがより生きるということのリアリティで、これこそ現実とつきつけられてるようでした。また近所付き合いが頻繁で、近所の人たちの助けを借りて、突然の30人分の食事の用意を頼まれても難なくこなして商売にし稼いでしまうところは、地域にしっかりと根ざして力強く生きてる感じがしました。
映画にはぐうたらでいやらしい父親しか男が出てこず、ペネロペの父親である男もかなりひどく描かれていて、女しか実際出てこない映画です。男がしっかりしないから、女がこんなにも自然にたくましくなってしまったといった感じの映画。男の人は観るのがいやになるかもしれません。
これまで英語を話すペネロペの声のトーンが好きでなかったのですが、このスペイン映画で彼女のスペイン語で話す声がいいなあと思いました。特にこの映画の題名にもなっている「Volver」という歌を彼女がパーティーで歌い上げるのですが、なかなかうまくて素晴らしく感動ものでした。今後もペネロペがハリウッド映画にばかりでないで、本国スペインの映画にどんどん出て欲しいなあと思いました。