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灼熱の魂 [カナダ映画]

カナダ映画「灼熱の魂」(Incendies)を観ました。

灼熱の魂 Blu-ray

灼熱の魂 Blu-ray

  • 出版社/メーカー: アルバトロス
  • 発売日: 2017/10/04
  • メディア: Blu-ray

2010年の作品。IMDb評価は8・3。ヒューマンミステリードラマ。カナダのアカデミー賞であるジニー賞の作品賞を含む8部門の独占受賞。レバノン生まれでカナダに移住したラジディ・ムアワッドの戯曲「焼けこげるたましい」の映画化。観終わった後味がかなり良くない。宗教紛争、民族紛争の中、過酷な運命を辿らざるを得なかった人生を垣間見辛かったです。しかしシナリオが抜群で、見せ方がうまく夢中になって観ました。

母ナワルが亡くなった。双子の姉と弟のジャンヌとシモンは公証人から2通の手紙を受け取る。1通はジャンヌとシモンに兄がいるためその兄を探してその手紙を届けること。もう1通は父がいるのでやはり父を探して父に届けること。それを終えたら母の墓に名を刻むようにとの指示だった。ジャンヌにとってもシモンにとっても兄がいることや父が存命していることが青天の霹靂だった。

母ナワルの人生をたどる姉のジャンヌ。35年前ナワルは当時付き合っていた人の子供を宿す。その人は異教徒で殺される。子供を密かに出産するも世間体のためにその村にいられなくなり、ナワルは叔父の元に行き大学へ通い、子供は養子に出される。その時子供の足首に針で3つ刺しタトゥーを入れた。社会民族党の閉鎖、大学の閉鎖があり、ナワルは自分の産んだ子供を探すためバスで移動中キリスト教徒に襲撃される。自分はキリスト教徒だと言って、バスに乗る前に隠した十字架のペンダントを見せ命拾いする。孤児院は襲撃されており自分の産んだ子供がどこにいるのかわからない始末。その後キリスト教右派の指導者を銃殺し、政治犯としてクファリアットに13年間収監される。その間アブ・タリフにレイプされ子供を産むことになる。

最初姉のジャンヌが母の過去を調べ現地に赴き、後から弟のシモンが姉のジャンヌを探しに来ます。母の産んだ子供は孤児院が爆破されその後子供が軍人にさせられ、やがてクファリアットへ送り込まれ拷問人員となります。その時その子供はアブ・タレクと名乗るのです。母ナワルは自分の産んだ子供によってレイプされていたことがわかります。残酷な真実。そして生まれてきた子供というのが双子の姉と弟、ジャンヌとシモンでした。これもまた残酷な真実。ジャンヌとシモンはそのことを知り愕然となります。託された手紙は2通ともアブ・タレクに渡され、母の墓碑に名が刻まれました。プールで突然死した母は、実は足に3つ点が入ったタトゥーの男を見つけてました。それが引き金でショック死したのでした…。

映画ではどこの国のことだとはっきり示していないのですが、レバノンの内部紛争を描いています(原作もレバノン人)。イスラム教とキリスト教の宗教紛争が続き、パレスチナ人がレバノンに流れ込むとパレスチナ人がキリスト教徒に襲われ、そのバス襲撃を機に内戦へと発展。イスラエルがレバノンに侵攻撤退しレバノンには難民が今でもたくさんいます。

こんなにもむごい映画の結末がかつてあっただろうかと思う映画でした。真実に目をそむけたくなるし辛すぎると思いました。余りにもショックでしばらく立ち直れないくらい。ただ映画の見せ方が抜群で食い入るように観ました。たぶんシナリオも映像編集もうまいのだと思います。後味悪すぎですが観る価値はあります。naonaoお勧め度★★★★★

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アロフト [カナダ映画]

カナダ、スペイン、フランス映画「アロフト」(Aloft)を観ました。

Aloft / [Blu-ray]

Aloft / [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: Sony Pictures
  • 発売日: 2015/09/29
  • メディア: Blu-ray

2015年の作品。IMDb評価は5.3。ジェニファー・コネリー主演。母と息子の確執を描いています。ジェニファー・コネリーの確かな演技力とキリアン・マーフィーの目の青さがとても印象的な映画でした。

母親ナナ(ジェニファー・コネリー)は次男の病気を治すことに必死で、半信半疑ながらもあるヒーラーの集まりに子供を連れて参加。余りにも人気なのでくじ引きのように白い石を引いた人だけがヒーラーの施術を受けることができるようになっていて、ナナは白い石を引くことができず肩を落とす。長男アイヴァン(キリアン・マーフィー)は退屈で飼っている鷹を飛ばすと、ヒーリングで使う枝で作ったトンネルに鷹が引っかかってしまい、最終的には人里離れた平原で鷹を置いていかなければ、乗ってきた車にまた乗ることはできないと言われ、泣く泣く鷹を離すがスタッフが銃で鷹を撃ってしまう。ショックを受けるアイヴァン。もう今は既に大人になり、結婚して子供のいるアイヴァンは、ジャーナリストのジャニア(メラニー・ロラン)に取材を受けているが全く気が進まない。母親がヒーラーとなり、幼い自分を捨てて家を出ており、取材は母親のところに一緒に行くことだった。アイヴァンは幼い頃、母がヒーリングをしている間、弟と二人で車に残され待ちきれず車を勝手に運転して湖で弟を溺死させてしまう過去を持っていた。そして母がいるところへジャニアと向かい何十年ぶりに再会すると、実はジャニアも病気を抱え、ヒーラーであるナナに施術を望んでいたのだった。ジャニアは白い石を引くことができなかったが、ナナは息子のアイヴァンに白い石をこっそり渡し、アイヴァンはジャニアにその石を渡すのでした…。

寒々しい風景がたくさん出てきます。秋から冬に向かうカナダの大平原。氷で覆われた湖。行けども行けども白い氷の世界。凍った氷が薄くなっている個所のある湖。この映画は夏の暑い盛りに観たのですが、夏に冬の映画を観るのも乙なものでした。医学で治らなければ藁にでもすがりたいと思う気持ちはわかります。でも果たしてそれが本当にいいのか悪いのか。そして結果的に家族を崩壊させてしまってまでやることなのか、やはりとても疑問が残りました。人は諦めの気持ちも大切なのだと思いました。母も息子もとっても傷ついて生きてきて、年月が経ち再会することで少しはお互いを理解し会えたのかなと思います。naonaoお勧め度★★★★

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しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス [カナダ映画]

カナダ・アイルランド合作映画「しあわせの絵の具~愛を描く人 モード・ルイス」を観ました。


しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス [DVD]

しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス [DVD]

  • 出版社/メーカー: 松竹
  • 発売日: 2018/10/03
  • メディア: DVD

2016年の作品。IMDb評価は7・6。カナダの画家モード・ルイスの半生を描く。絵が可愛らしく、グランマ・モーゼスをもっと植物なり動物なりをズームアップした感じの絵だなあと思いました。この映画によってモード・ルイスの存在を知ることができて良かったです。


リウマチのために足を引きずって歩くモード(サリー・ホーキンス)は、魚の行商人エベレット(イーサン・ホーク)が家政婦の広告を出しているのを見て、彼の家に押しかけ住み込みで働くことにします。初めはギクシャクしてうまくいかなかったけれど、二人は次第に心を通わせ結婚することに。ニューヨークから来ていたサンドラがモードが家の中に描いていた絵を見て、彼女に絵を描いてくれるよう依頼。その後評判となりニクソン大統領からも注文が来るようになるのです…。


兄にも叔母にも邪見にされ、居場所のないモード。エベレットは孤児院育ちで不愛想。住み込みの家さえも電気もなければ水道も通っていない小さな家。彼女自身はリウマチなので歩くのも不自由だし、少しずつ手も言うことが効かなくなります。二人がそれでも何とか夫婦となってお互いがなくてはならない存在となり、モードの絵も評判となり売れていきます。本当に良かった。実際の彼女の絵がカナダの美術館にあり、家の中に描かれた絵も残っているらしいので、いつかまた旅行できるときが来たら行って実際に観てみたいなあと思います。楽しみが増えました。

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