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女のいない男たち [本]

最近読んだ本です。

女のいない男たち

女のいない男たち

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2014/04/18
  • メディア: 単行本


6つの短編集の本。それぞれに楽しくてあっという間に読んでしまった。村上春樹やはり大好きです。

「ドライブ・マイ・カー」女優の奥さんはすでに亡くなっているのですが生前若いの俳優と浮気をしており、同業者のだんなさんはその同じ俳優仲間でもあるその奥さんの浮気相手と会って酒を飲むという話。専属ドライバーの言葉「(奥さんが大して魅力的でない人と浮気をしたりするのは)そういうのって病のようなものなのです…」というのが印象的。「そして僕らはみんな演技をする」というセリフも。

「イエスタディ」はビートルズの「イエスタディ」を大阪弁で歌うという変わった男の物語。その男には小中高と一緒だった彼女がいて、彼女一人が大学受験に成功、男は失敗したことからそれぞれ何となく別の道に。そして親友らしき第三者の私が何年かぶりに彼女のほうに再会し男友達のことを耳にし当時のことを思い出す物語。「記憶は避けがたく作り替えられていくものだから」今となっては「イエスタディ」のへんちくりんな大阪弁の歌詞が思い出せない…。男がアメリカに行って働いていて女性とは離れ離れになっている今があるけれど、最後は映画「ハナミズキ」と同じようにこの男女が一緒になれるんじゃないのかなあと勝手に想像してしまいました。

「独立器官」は悲しい物語。華やかな独身貴族でガールフレンドにも事欠かない50代の美容外科の医師。彼はたくさんの女性を相手にしながら最後は既婚女性に本気で恋をし、「彼女の心が動けば、私の心もそれにつられて引っ張られます。ロープが繋がった二艘のボートのように。綱を切ろうと思っても、それを切るだけの刃物がどこにもないのです…」と恋の様子を語ります。彼は食がのどを通らなくなり、最後は亡くなってしまいます。女性は旦那さんのもとへ戻ったわけでなく他の別の若い男性のもとへと走った、というのも酷いのですが…。自殺してしまうほど好きな人に出会えるのはある意味幸せですが、それでもなお生きていくという選択をする人間であってほしい。でも小説としては亡くなったほうが話として完成されているように感じます。

「シェエラザード」はベッドを共にするごとに、彼女がひとつ興味深い話をしてくれるという物語。「千一夜物語」の王妃シェエラザードのように。前世がやつめうなぎだったと思うと語る彼女。そして学生の時好きだった男の子の家に何度も忍び込み、彼のものを何かしら頂き、自分のものを置いてきたと話す。彼女とはまたいつ会えるかわからないから、その話の続きも聞けるかどうかもわからない主人公。読んでるこちらはこの話の続きが知りたいと強烈に思ってしまった。そう思わせてしまうのがこの短編のうまさです。

「木野」は妻の浮気現場を目撃しそのまま家を飛び出し、会社を辞め新しくバーをオープンさせた男、木野の物語。怒る時にしっかり怒らなかったり、悲しむべき時にしっかり悲しまなかったために、それなりにうまくいっていたバーがうまくいかなくなり、バーに来て本ばかり読んでいた客が「この店がこの場所にできたことを大変喜んでいました。でも残念ながら多くのものが欠けてしまったのです…正しからざることをしないでいるだけでは足りないことも、この世界にはあるのです…この店を閉めて、遠くに行くことです」と言う。木野はそれに従うのだった。蛇がたくさん出てきたり、たばこを肌にあてられてケロイドのような状態になった女が出てきたり、その怪しさが楽しかった。「羊をめぐる冒険」や「海辺のカフカ」「1Q84」に通じる怪しさがあり、村上ワールドを堪能しました。

「女のいない男たち」は昔つきあっていた女性の旦那から夜中に電話が入る。「この世界から(その女性が)永遠に姿を消した」ことを。そこから彼女とのことをいろいろ考えるという物語。「僕は14歳で、彼女も14歳だった。それが僕らにとっての、真に正しい邂逅の年齢だったのだ。僕らは本当はそのように出会うべきであったのだ」「幸福に心安らかに暮らしていることを祈る。…祈る以外に、僕にできることは何もないみたいだ。今のところ。たぶん」何だか「ダンス・ダンス・ダンス」を思い出した。そうであるべきだった~というところなんかが。

The Help

The Help

  • 作者: Kathryn Stockett
  • 出版社/メーカー: Berkley
  • 発売日: 2010/05/04
  • メディア: マスマーケット

エディー・レッドメインのドラマ「大聖堂」を観て、原書”Pillars on the Earth"に挑戦(長編でしたが面白かった)そのノリで、映画「ヘルプ~心がつなぐストーリー」を観て、原書”Help"にもトライ。こちらも読めて良かったです。この本は、ニューヨークタイムズのベストセラーに100週以上入り続け35か国語に翻訳、500万部以上を売り上げたベストセラー。この本を読むと映画がとってもうまくまとまっていたのがよくわかります。そして映画では描き切れていない細かな心情や様子が書かれていて、特に密かにメイドたちに聞き取りをしていく主人公スキッパーや聞き取りされる立場のエイビリーン、ミニーの様子、スキッパーの母親がガンで弱っていく様、恋人のスチュアートの関係、本が有名になってどんどん売れていくところなんかはその描写に引き込まれてしまいました。時代背景が60年代なので、キング牧師やケネディ大統領、プレスリーとかマリリン・モンロー、フランキー・ヴァリ(映画「ジャージーボーイズ」で知った)などの名前もちらりと出てきます。今現在も報道を観ているとまだまだ黒人に対する差別があるアメリカですが、この本を読むと50年前、たった50年前に平気で「同じトイレを使うと黒人から病気が移る」と平気で黒人の前で言う白人がいるのに驚きです。著者は自分が幼いころドミトリーというメイドさんを雇っていてこの本のようにドミトリーに聞き取り調査のようなことができなかったことを悔いています。この本が全くのフィクションと著者は言い切ってますが、著者がそのような環境にあったからこそ生まれた作品だったのだなあと思いました。ケン・フォレットの”Pillars on the Earth"(こちらは正統な英語で読みやすかった)と違い、英語がthemをemとか、let meをlemmeなど口語の砕けた文はちょっと読みにくかったですが…(三単現のsも無視、ain'tがたくさん使われてました)

地図のない場所で眠りたい

地図のない場所で眠りたい

  • 作者: 高野 秀行
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/04/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

角幡唯介の冒険記を一通り前に読んだので、これからの角幡唯介の冒険にもとっても興味あります。それに彼の書く文章が素晴らしいのでまた読みたいという気持ちもあります。ただこの本は彼の早稲田大探検部の先輩である彼と同じような冒険家である人との対話本でした。本人たちは全く冒険の仕方が違うのでお互い違うと思っているようですが…。本多勝一の名前が出てきてそういえば彼の本も面白かったなあと思い出しました。

以下、本の中で紹介されていた興味ある本(これから読みたい本)を自分の備忘録として載せておきます。

ロスト・シティZ~探検史上、最大の謎を追え

ロスト・シティZ~探検史上、最大の謎を追え

  • 作者: 【著】デイヴィッド・グラン
  • 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
  • 発売日: 2010/06/30
  • メディア: 単行本


サードマン: 奇跡の生還へ導く人 (新潮文庫)

サードマン: 奇跡の生還へ導く人 (新潮文庫)

  • 作者: ジョン ガイガー
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/03/28
  • メディア: 文庫

 

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コメント 1

naonao

>nice!をいただき、皆様ありがとうございます。
by naonao (2015-05-06 10:42) 

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