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オリーブの林をぬけて [イラン映画]

イラン映画「オリーブの林をぬけて」(Through the Olive Trees)を観ました。

オリーブの林をぬけて ニューマスター版 [Blu-ray]

オリーブの林をぬけて ニューマスター版 [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: TCエンタテインメント
  • 発売日: 2019/02/08
  • メディア: Blu-ray

1994年の作品。IMDb評価は7.7。「友だちのうちはどこ」「そして人生はつづく」に続く「オリーブの林をぬけて」。キアロスタミ監督の3部作のラストの作。「そして人生は続く」に出ていた若夫婦を主役に作ったこの「オリーブの林をぬけて」は夫役の青年が妻役の娘さんにプロポーズを実際断られていたとのことで、そのギクシャクした様子が、映画の中で映画撮影するという入れ子状態で映し出されます。二人の仲が悪いので、何度も何度も映画を撮り直し。何が現実で何が現実でないのか。何だかとても不思議だったけれど、お馴染みのイランの田舎町コケルを舞台に「友だちのうちはどこ」「そして人生はつづく」に出てた顔馴染みの人たちも出てきてそれなりに楽しい映画でした。「友だちのうちはどこ」の主役アハマッドも大きくなってたし、もう一人の男の子も大きくなってた。アハマッドに道を案内してくれたおじいさんも出てきて、役の上でもっと年寄りに化けていたとも話していた。

今回の主役はホセインとタヘレ。タヘレが好きなホセインは、タヘレに何度挨拶しても挨拶してもらえないことに落ち込んでいる。前作「そして人生はつづく」で新婚さんを演じてたホセインとタヘレ。この「オリーブ林をぬけて」ではホセインとタヘレの仲が良くないこと、結婚を断わられた事情を映し出す。「家のないものに嫁はやれない。文字も読めず頭が空っぽなものに嫁はやれない」とタヘレの家族に言われたと言うホセイン。ギクシャクしてるので二人共新婚さん役をやりたくなくてセリフも全然言えず、映画も頓挫しそうに。「自分が文字を読めないから妻には読める人を望んでいる。夫婦のどちらかが文字を読めなければ生活できないから」とホセインは言う。読書するタヘレに「もし僕のことが好きで気があるなら、本のページをめくってほしい」とお願いするホセイン。何度も何度もタヘレに言葉かけをする。映画のセリフでは妻にあれこれ指示を出す傲慢な夫役だが、「自分はそんな風にあれこれ指示しない」とタヘレに伝えるホセイン。そして映画撮影は終了。車に座席が足りずタヘレは徒歩で家路に向かう。その後をホセインが追う。オリーブ林を通り抜け、緑が広がる草原を映すカメラ。二人の距離がどんどん縮まり、追いついた後ホセインがこちらにまた戻って来る。その様子をずっと遠景で撮っている。それがラスト。果たしてホセインの口どきがうまくいったのかいかなかったのか…。

二階のベランダに植木鉢がたくさんある素敵な家。ホセインが何度も何度も同じセリフを言う場面で出てくる家。ここに飾られた植木鉢が子供たちの家々から持ち寄った植木鉢であったことがわかりました。もともとはこんな素敵に飾られた家はなくて村全体で急遽作り上げたセットであることがわかります。でもこの家が何とも素敵でインドのシムラーとかマナリー辺りの宿を思い出しました。ちょうど二階のベランダにこんな感じで植木鉢が並んでいたのを思い出しました。スイス辺りにもありそうだけど。また草原の見晴らしいい場所から丘の側面に家々が並んで建ってあり、それはチベット文化圏でよく見かけるゴンパ(寺)みたいな風景に見え、懐かしい気持ちでいっぱいになりました。何だかとっても似てる風景。

この3部作。順番に見ると馴染みの顔もでき、イランの田舎を旅した気分になれます。時間のない人は「友だちのうちはどこ」だけでもお勧め(naonaoお勧め度★★★★★[王冠])「オリーブの林をぬけて」の評価はnaonaoお勧め度★★★★

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そして人生はつづく [イラン映画]

イラン映画「そして人生はつづく」(Life and Nothing More)を観ました。

そして人生はつづく ニューマスター版 [Blu-ray]

そして人生はつづく ニューマスター版 [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: TCエンタテインメント
  • 発売日: 2019/02/08
  • メディア: Blu-ray

1991年の作品。IMDb評価は7.9。1990年に起きたイラン北部地震の被災地へ半年後に向かったロードムービー。「友だちのうちはどこ」の監督キアロスタミとその息子が映画撮影したコケルに向かう。レンガブロックで建てた家は脆くも崩れ、たくさんの身近な人が亡くなり悲しみながらも人々が日常を送っている姿を観ることができます。

マンジールから先は援助物資を運ぶ車しか通れないようになっていると聞き、ルートを変えるもまたも渋滞で身動きできず。「何とかなるさ」と言って混んでいない砂利道を通って目的地のコケルまで向かおうとするキアロスタミ監督とその息子。山崩れで道が塞がれていたり、道に亀裂が入ってこれ以上進めずUターンしたりしながらそれでも何とか進んでいく。途中人を乗せたり、持ってる大荷物を載せてあげたり、人に道を尋ね尋ね何とかたどり着く。行く先々で色んな人たちの声を聞く。あるおじいちゃんが言う。「たくさんの人が亡くなって家が無くなったのに自分のうちだけは大丈夫だった。うちは特別扱いだったのだろうか」「年寄りは若いことが素晴らしいと初めてわかる。死んだ人は生きていることが素晴らしいと初めてわかる。墓に入った人が生き返ったら生きることの素晴らしさがきっとわかる」おばあちゃんが言う。「16人も人が死んだ。家は私の全財産なのにそれも無くなった」「神のご加護を」と言って別れるキアロスタミ監督。途中コカ・コーラが飲みたくなった息子。ほとんど潰れた店先にコカ・コーラがあり、お金を置いてもらって飲む。生ぬるくて全部飲みきれず捨てようとすると、横から「捨てるなら赤ちゃんに頂戴」と言って母親が哺乳瓶にコカ・コーラを入れる。

コケルに着くと新婚の新郎にインタビュー。地震後5日目に結婚したという(この新婚さんたちがこの映画の続編「オリーブの林をぬけて」の主役で映画出演してる)緑の目をした「友だちのうちはどこ」の映画に出た男の子と再会し、コケルで家を失った人たちがキャンプしてる場所に案内してもらう。アンテナがついてこれからサッカーをTVで観れると喜んでいる。アンテナを取り付けている男の人が言う。「妹や姪が亡くなったけれど仕方ない。ワールドカップは4年に一度だから見るよ」ある男の子が言う。「兄さんが亡くなった。蚊に食われて蚊帳に逃げ込んだら地震が起きた。僕は助かったけど、父は何故兄が蚊に食われなかったのかと怒り出すんだ」と。終わり近くになり、「友だちのうちはどこ」の映画の主役の男の子が生きている情報を子供たちから得る。彼はストーブを運んでいたよとの情報。坂道なのでフルスピードでないと坂道が登れないかもという。ストーブを運んでる人が車を押してくれ、坂道を登ってその途中で彼を乗せてあげる様子を遠景でカメラが撮っている。果たして彼がこの主役の男の子だったのか?

あちらでもこちらでも地震でたくさんの知り合いが亡くなり、家を無くしそれでも何とか生きていく人々の様子が伺えます。一緒に監督と共にイランのコケルまで行って彼らの様子を見てきた気分。1990年と言ったら私はニュージーランドとインドに旅行してた年。イランの地震のことなど全然知りませんでした。残された人々は残された人々の人生が続き、嘆いてばかりはいられない。色んな教訓を残しそれでも人生は続いていく…。naonaoお勧め度★★★★

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友だちのうちはどこ? [イラン映画]

イラン映画「友だちのうちはどこ?」(Where Is the Friend's Home?)を観ました。

友だちのうちはどこ?ニューマスター版 [Blu-ray]

友だちのうちはどこ?ニューマスター版 [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: TCエンタテインメント
  • 発売日: 2019/02/08
  • メディア: Blu-ray

1987年の作品。IMDb評価は8.1。ドラマ映画。友だちのノートを返したいために必死になって友だちの家を探す少年の冒険物語。イランの風景が時にネパールのトレッキングコースで観た民家や白い壁の青いドアのモロッコやスペインアンダルシアの家々、またペルーの田舎道や少年アハマッドの家がインドの北部やグアテマラで泊まったような居心地よい安宿を思い出させました。子供目線でずっと追っていき一緒になってこの街を歩き回った気分になり、ちょっと小旅行した気分です。子供たちが素朴で可愛い。物語も最後はほっこりしました。

アハマッドは小学校に通っている。学校では隣に座る男の子モハマッド=レザーが3回も宿題をやって来ずに先生に叱られ泣いていた。次回やって来なれば退学になるくらい大変なことになるとわかっていたが、こともあろうことかモハマッド=レザーのノートが間違ってアハマッドのところに渡されそのまま帰宅してしまった。一刻も早くモハマッド=レザーのところにノートを届けたいが、母親がまず色んな用事を言いつけ宿題をしてからでないと行ってはいけないと言う。やっとの思いで出かけたものの家が探せない。人に聞き色々探し一度諦めて戻ると自分の祖父が煙草を買って来いと用事を言う。そこでモハマッド=レザーのお父さんと思われる人がいて、話しても大人たちは全然アハマッドの話を聞いてくれないので仕方なくロバに乗ったモハマッド=レザーのお父さんらしき人の後をついていく。でも結局モハマッド=レザーは住んでいずその代わりその家の子供からまた違う情報を手に入れ、そこへ向かう。ドアや窓作り、ゆりかごまで作ってたおじいさんの家にたどり着くとどの家も良く知っていて一緒についていってくれることになった。しかしモハマッド=レザー宅についたのにドアを前にしてアハマッドはそのまま戻ってきてしまう。真っ暗になって犬にほえられ怖い思いをしながらも家路につく。ノートを返せなかったので食欲がなく元気がない。母親に宿題を片付けなさいと言われて宿題をするアハマッド。翌日遅刻して登校。友だちのノートを無事渡せ宿題も片付けてあったのでモハマッド=レザーは先生に叱られずに済んだ。めでたしめでたし…。

最後のおじいさんにノートに挟むように言われて挟んだ花がモハマッド=レザーのノートから出てきてほっこりでした。先生にもモハマッド=レザーは叱られなかったし。アハマッドは大人たちに翻弄され、言っていることもまともに取り合ってもらえず、知らないところを探し回って結構な大冒険をします。渡せなかったので翌朝学校に行くまでも心配。小さな心を痛めているのもよくわかりました。それにしてもこの景色。まるでアハマッドと共に街歩きした気分。こういう映画大好きだと思いました。1990年代にイランにはトルコから入ろうと思っていましたが、一週間くらいしかビザが降りないことがわかり(当時日本にたくさんイラン人がやってきてイラン人へのビザを短くしたため、日本人に対しても短くされた時期でした=当時の上野にはたくさんのイラン人がいましたから)イラン国内に入っても更に延長しなければならず、またその手続きが係官によってまちまちとの情報を得たので、面倒くさくなりトルコからパキスタンに飛んでしまったのでした。広いイランを一週間で横断するには絶対無理だと思ったから。まあ仕方ない。縁がなかったのかなあと思います。でも街並み、家の素朴な感じが、ネパール、インド、モロッコ、スペイン、グアテマラ、ペルーを思い出させ懐かしい気分になりました。映画自体もほっこり。お勧めです。naonaoお勧め度★★★★★[王冠]

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