SSブログ
ドキュメンタリー ブログトップ
前の5件 | -

ダヴィンチは誰に微笑む [ドキュメンタリー]

フランス映画「ダヴィンチは誰に微笑む」(The Savior for Sale)を観ました。

ダ・ヴィンチは誰に微笑む [DVD]

ダ・ヴィンチは誰に微笑む [DVD]

  • 出版社/メーカー: ギャガ
  • 発売日: 2023/04/05
  • メディア: DVD

2021年の作品。IMDb評価は7.4。ダヴィンチが描いたのではないかと言われている男性版「モナリザ」の「サルバトール・ムンディ(世界の救世主)」の絵画を巡る話。ドキュメンタリー。絵画の売買の裏側を観れて面白かったです。以前観たオランダ映画「レンブラントは誰の手に」を思い出させてくれる映画でした。一枚の絵画を巡っての真贋問題で当初5人の専門家のうち1人しかダヴィンチの作と言っていず、もう1人はダヴィンチのものでないと言い、残る3人は判断保留と言っているにも関わらず、1175ドル(当時のレートで13万円)の絵画が時を経て、最終的に4億5千万ドル(508億円)にまでなったという驚きの話。

2005年。ニューオリンズの家にあった「サルバトール・ムンディ」の絵画が売りに出される。入札はわずか1人しかいず、その時の入札額は1175ドル。だれも見向きもされなかったかなりダメージを受けたその絵を買い取った美術商は、専門家に依頼しその絵を洗浄、修復してもらう。すると右手の親指が二本現れた。「どうやらこれは本当にダヴィンチ作なのでは?」とますます確信を持った彼。ロンドンのナショナルギャラリー館長に掛け合うことに。ナショナルギャラリーでは5年がかりでダヴィンチ展を開くことを企画。学芸員や専門家が集い「サルバトール・ムンディ」の真贋を見極める。そして2011年ロンドンナショナルギャラリーではダヴィンチ展にこの絵も展示することに。ただこの時の真贋は本当は決着がついていなかった。専門家の一人がダヴィンチの作と言っているに過ぎなかった。

その後2013年にモナコに住むロシアのオリガルヒ(新興財閥)の一人が、彼の美術コレクションを一手に担う担当者を使ってサザビーズ経由で「サルバトール・ムンディ」を秘密裡に1億3000万ドルで買い取る。買い手がわからないようにいくつかの会社などを経由し売買を重ね担当者も更に別の人を派遣しパリのホテルで商談をまとめさせる。この絵画はシンガポールの倉庫へと送られ保管される。後にこの絵がどれくらいで売られたのかの記事が出て、8000万ドルであろうことが世界に伝えられると、ロシアのオリガルヒが担当者を訴える。担当者は4400万ドルを自分の懐に手数料として入れていた。しかしこの担当者は言う。「これは詐欺ではなく商売なのです」と。いくつもの段階を経て買い手がわからなくする手法を使って入手した絵画だったからだ。

その後2016年にクリスティーズでこの絵画が売り出される。現代アートの売買で有名なこの会社でこの絵画を売ることには意味があった。俳優のディカプリオを含め一般の観客がこの絵画を観て感動する様子の宣伝ビデオを作り、この絵画人気を煽った。絵画の帰属を重視しない人たちが集まるこのオークションでこの絵画に4億5000万ドルの値が付く。5000万ドルはクリスティーズの手数料。社員たちは大喜び。翌年買い手がサウジの皇太子であることがスクープされる。サウジアラビアでは文化面を重視する政策を取っているという。

2018年、ルーブル美術館でダヴィンチ展を開くときに「サルバトール・ムンディ」の真贋が判定される。はっきりとしたコメントを出していないが「サルバトール・ムンディ」は展示されなかった。以前集められた専門家5人の2人の専門家はダヴィンチの工房のものの作品と言う。「絵は完全にレオナルドのもの」という研究本はスポンサーだけが独占所有しているという…。

「サルバトール・ムンディ」の絵に使われたポーズの習作の絵を、ロンドンナショナルギャラリーで「ダヴィンチ工房」とカタログに記載しているにも拘らず、クリスティーズでは「ダヴィンチ作」としていてそれが罪だとイギリスのジャーナリストが言っていました。クリスティーズこそ詐欺を働いている。そして皆うまい具合に踊らされている。そしていつまでも展示されないこの絵は一体いつお披露目されるのか。色々興味深い映画でした。絵画好きの人は面白いと思います。naonaoお勧め度★★★★★

nice!(16)  コメント(1) 
共通テーマ:映画

一人っ子の国 [ドキュメンタリー]

アメリカ映画「一人っ子の国」(One Child Nation)を観ました。

一人っ子の国 (原題 - One Child Nation)

一人っ子の国 (原題 - One Child Nation)

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2019/11/08
  • メディア: Prime Video

2019年の作品。IMDb評価は7.5。サンダンス映画祭のドキュメンタリー部門でグランプリ獲得。中国生まれの女性二人の監督による1979年から2015年の35年間にわたる中国の一人っ子政策の影響を探るドキュメンタリー。知られてない様々な問題が浮き彫りになり、その弊害が怖くもありました。

一人っ子政策真っただ中の1985年当時、ポスターにもマッチにもお菓子の箱にも身の回り品の何もかも、一人っ子が素晴らしいと宣伝していた。劇の演目でも一人っ子を讃える内容が。また女性には不妊手術を迫り、それに従わない者には家の取り壊し。元村長は言う。「田舎の役人は絶対に上の命令を聞かなかければならない。不妊手術させることは絶対命令であった。伝統的に男の子をみんなが欲しがっていた」と。また不妊手術、中絶手術に携わってきた助産婦が言う。「今は不妊治療に取り組み命を授ける仕事をしている」という。「かつて一日20件以上の不妊手術中絶手術をしてきて5,6万人の子供の命を奪った。政府に言われた仕事であったとしても悪事を行ってきたことには変わりはない。命を授けることで罪が消えると僧侶に言われ、今では不妊治療をしてたくさんの人から感謝旗をもらうほど感謝してもらっている」と。

計画生育委員で優秀労働者としてたくさん表彰され、江沢民や胡錦涛と写真に納まっている女性が言う。「間違いなく政策は正しかった。この政策がなければこの国は滅びていた。これは人口戦争だった」と。「8~9か月で中絶させた。泣き叫び手術途中なのに逃げ出す女性もいた」と。芸術家のワン・ペンは言う。「長期間にわたる洗脳により一人っ子政策がなされた」と。1996年彼はごみをテーマに創作活動していた。「ごみの中から黄色のビニールに包まれて捨てられた胎児を見つけた。命の大切さを考えてほしい。一人っ子政策とは何か理解してほしい」と言い、ホルマリン漬けの胎児、殺されたのに笑顔の胎児のホルマリン漬けを作品として作った。

監督の一人の女性の家では「江西省の田舎であったため、一人目と二人目の間を5年空ければ二人目もOKという策を取っていた」という。そのためその女性監督の下に5歳離れた弟がいる。おじいちゃんたちは「間違いなく男の子が欲しかった。女の子はどうせ他家へ嫁に行くから」という。弟は「自分だけいつもえこひいきされていた。姉が働き自分の世話もし学校に行かせてくれた」という。「女だったら間違いなく捨てられてた」と。娘を出産した叔母は「泣いてる娘を捨てるにもただただ生きてほしいがために人身売買の仲買人に自分の娘を託した」という。その人身売買の仲買人は刑に服し今は出てきて警備員をしていた。その元仲買人は言う。「1万人くらい養護施設に連れて行った。車で回っていると1日平均4,5人捨てられていた。電車で遠出して広東や湖南のほうからも連れきたこともある。1人200ドルで引き取ってくれた」と。この子供たちは国外へと出され養子縁組されていたのだ。1992年からアメリカは本格的に中国からの養子をとるようになったという。

「施設に売られた子供たちは一体いまどこに?」と調べを進める監督。アメリカ人と中国人女性の夫婦が作った実子探しをする会社が存在することを知る。彼らが語る。「養子縁組は1万ドルから2万5千ドル。実は施設は当時偽装していた。子供たちの発見された場所や状況など同じ場所や同じ状況を使っていることがわかった。本当は捨てられた子供でなく孤児でもなく拉致された子供もいる」と言う。また「役人が子供と一緒に隠れていたおばあちゃんにこの子を差し出さなければ2000ドルもの大金を罰金と称して請求したケースもある」という。「また今DNAテストをして1組だけマッチしたが、子供の方が実の親に会いたくないとメールで送ってきた」という。「アメリカの育ての親も今になって中国に子供たちが戻されるのではないかと心配するケースもあり、連絡を取りたがらない」という。アメリカに双子の姉がいることを知った妹はSNSで繋がったが「怖くて中国に来ないか?と誘えないし、姉がアメリカのどこに住んでいるのかも聞き出せていない」という。

一人っ子政策は終了し、今は2人を推奨しているという。「一家で2人子供を育てる」「2人は素晴らしい」といった具合に町中の壁にもテレビでも2人を推奨する標語で溢れている…。

胎児が手術によって黄色のビニールに入れられ捨てられてるその映像はショックでした。また捨てられてもいないのに拉致によって養子縁組の商売の道具にされた子供もいるというのも酷い話でした。一人っ子政策のその闇の部分がよくわかり、当事者の人たちは大変な思いをしてきたのだなあと思いました。中国は色々あってやはり怖いなあと改めて思いました。naonaoお勧め度★★★★★

nice!(13)  コメント(1) 
共通テーマ:映画

レンブラントは誰の手に [ドキュメンタリー]

オランダ映画「レンブラントは誰の手に」(My Rembrandt)を観ました。

レンブラントは誰の手に(字幕版)

レンブラントは誰の手に(字幕版)

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2021/07/07
  • メディア: Prime Video

2019年の映画。IMDb評価は7.0。ドキュメンタリー。44年ぶりに発見されるレンブラントの絵の真贋を巡っての話と、フランス家のロスチャイルドが長年持っていたレンブラントを手放す際の絵の争奪戦の話。レンブラントに生きる人たちの熱いドラマで観ていてこんな世界があるのかと面白かったです。

アムステルダムに住むヤン・シックスはレンブラントの研究家で画商。かつてはレンブラントがそのアムステルダムの邸に来て自分の先祖を描いておりその絵も邸に飾られている。所有する絵画は230枚。素描、エッチング、絵画と色々。レンブラントの仕事は早いことで有名で、モデルを一日しか雇わず後は弟子もたくさんいて弟子の手による周辺作も多いとのこと。レンブラント研究家の第一人者のエルンストにも真贋を頼んだところやはり本物である可能性が高いという。ヤン・シックスはクリスティーズで競り落としたが画商サンダーと共同購入を予定していたのにヤン一人で競り落としたことが後で問題となる…。

スコットランドの公爵家では城の中にたくさんの絵画が飾られているが、レンブラントの絵を盗まれたことがあるため、比較的高い位置に飾っている。しかし今回この絵を違う部屋に飾りもっと下に飾ろうとしている。あれやこれや部屋も模様替え。

ルーブル美術館では毎週一枚絵画を買い漁り、5年間それを続けてきた資産家夫妻カブランがいて絵のお披露目をしている。レンブラントを買い占め実に200枚もの絵画を所有したという。

シャンゼリゼ通りに近い場所に邸宅を構えるロスチャイルドは、長い間手元に置いて飾っていた夫婦の肖像画を売り出したいという。レンブラントが描いた夫婦の肖像画なので離ればなれにするわけにはいかない。その絵を巡ってアムステルダム国立美術館とルーブル美術館が火花を散らす。アムステルダム国立美術館側からルーブルに共同購入を持ち掛けたが実際には寄付金がかなり集まり、アムステルダム国立美術館は黙って密かに買ってしまえばよかったと後悔する。外交問題にまでなりそうな案件だった。

個人所有で観たことのないレンブラントの絵がたくさんあるのだと改めて思いました。美術館で絵を観るのは好きだしレンブラントの絵も好きですが、自分の家にレンブラントの絵があったら落ち着かないだろうなあと思いました。レンブラントにかける熱い戦いがあり、個人所有の裕福な人たちを垣間見、しかもロスチャイルド氏が実際に出てきたのも驚き。こんな大富豪も税金で苦労してるんだなあと思いました。専門家はずっと絵を見続けていればその画家が描いたものかどうかがわかると言います。それも凄いなあと思いました。絵画好きの人にはお勧め。裏話のようで興味深かった。naonaoお勧め度★★★★★

nice!(15)  コメント(1) 
共通テーマ:映画

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ☆アディオス [ドキュメンタリー]

イギリス映画「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ☆アディオス」を観ました。


ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス [Blu-ray]

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ギャガ
  • 発売日: 2019/12/03
  • メディア: Blu-ray

2017年の作品。IMDb評価は7・7。音楽ドキュメンタリー映画。大ヒットした「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」から18年経った5人のメンバーがアディオスツアーを決行。キューバ音楽ソンを歌う。


キューバでほとんど引退した年配のミュージシャンたちが集まって結成されたブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ。世界で熱烈な歓迎を受け、2016年ラストツアーに旅立つ。

映画はアフリカのルーツであるキューバ音楽ソンの歴史、黒人差別のあった時代、カストロやゲバラの時代、マイアミへ子供たちを送るピーターパン計画の時代、アメリカのカーネギーホールへの招待、エルトン・ジョンより人を集めたハイドパークでの公演、グラミー賞への参加でビザの却下、オバマ大統領のホワイトハウスへの招待、オバマ夫妻のキューバへの訪問など歴史と共に歩んだ彼らの功績を映し出しています。

それと共にたくさんのステージでの歌の数々。メンバーの死なども。

音楽があればどこでも踊りだすラテンの人々。中南米の旅行中に観た人たちと同じだなあと懐かしくなりました。また最後の最後まで生涯現役で活躍しようとするメンバーたちに、勇気をもらうようでした。

ラテン音楽はノリが良くて楽しくなる。素敵な映画でした。

nice!(12)  コメント(1) 
共通テーマ:映画

健さん [ドキュメンタリー]

一ツ橋ホールで「健さん」を観てきました。

ポスター画像

映画公式サイト:http://respect-film.co.jp/kensan/

2014年に亡くなった高倉健のドキュメンタリー映画です。高倉健の人物像に迫るエピソードを披露してくれるのはたくさんの人たち。40年来の付き人、実の妹、「ブラックレイン」で共演したマイケル・ダグラス、「幸せの黄色いハンカチ」で監督した山田洋次、任侠映画で何度も切られた八名信夫、「新・網走番外地」シリーズや「駅/STATION」「鉄道員(ぽっぽや)」の監督の降旗康男、紆余曲折してこの秋やっと公開映画となる「沈黙」(遠藤周作原作)のオファーを高倉健にして丁重に断られたと語る監督のマーティン・スコセッシ。またスコセッシ監督の映画「レイジングブル」を高倉健本人が大好きで何度も観ていたというエピソードもありました。そして結婚式の時のエピソードをそれぞれが語る中野良子、そして梅宮辰夫。他にも、ジョン・ウー監督、ポール・シュレイダー(脚本家)、ヤン・デポン、韓国の俳優ユ・オソン、映画館支配人、カメラマンなどなど。

たくさんの写真やたくさんの証言、大まかな人生を追い、時には軽快な音楽、しんみりとする音楽を使い分け、笑わせてくれるエピソードも添え、テンポもまちまちで飽きさせない工夫をしている映画でした。映画の最後には出演者の人たちから、映画のタイトルになっている「健さん」という呼びかけを集め、ちょっとした感動を呼びます。その証拠に映画を観終わった観客からは拍手が起こっていました。

高倉健の身に離婚、母の死が同時期に重なり、「どうしてこんなにも不幸が襲うのだろう?」と素朴に思ってあるお坊さんに尋ねたときに、「たとえ映画の中であっても人を殺めているのだから、それは現実世界と変わらないことなのです」といったようなことを言われ滝行を自ら課すようになったというエピソードもありました。任侠映画から足を洗い、「八甲田山」や「黄色い幸せのハンカチ」などに出演してたくさんの賞をもらっていきます…。

ある人は、クリントイーストウッドが演じたちょっとアウトローでありながらもしっかり道筋だけは通すといったガンマンと高倉健演じるやくざは共通していたと語り、またあるものは高倉健はフランクシナトラのような生き方だった、またあるものはトムクルーズが高倉健を意識して演じた…など語ります。

「漫然と生きる男ではなく、一生懸命な男を演じたい」といった高倉健自らの言葉も紹介されます。

「八甲田山」「幸せの黄色いハンカチ」「単騎、千里を走る」くらいしか健さんの映画は観たことがありませんが、渋くてものをあまり語らない昔の男の人というイメージはそのまま壊れることなく、世界中の人がリスペクトして止まないその意味がとってもわかる映画になっていました。健さん好きにはたまらない映画だと思います。特に健さん好きというわけではない私でも、観れて良かった映画です。


nice!(12)  コメント(1)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画
前の5件 | - ドキュメンタリー ブログトップ