100万回生きたねこ [本]
絵本を読みました。
いずれも人気のある絵本で、気になっていたものです。
王さまのねことして、船のりのねことして、サーカスのねことして、どろぼうのねことして、あばあさんのねことして、小さな女の子のねことして…、そして最後にのらねことして生きたねこの物語。「100万回、死んだんだぜ」と自慢していたねこが、最後は白いねこと家庭を持ち、白いねこが亡くなったとき初めて泣いて、もう決して生き返らなかったというお話。
輪廻転生を盛り込みつつ、ねこに感情が芽生えたときにやっともう生き返ることがなかったという、悲しいけれどほっとする話です。この絵本がロングセラーである意味がわかりました。
英語版で読みました。これも生と死を扱った絵本です。
アナグマさんが死を意識してから見た夢は、長い長いトンネルの夢でした。そしてアナグマさんが死んでしまうと、モグラくんははさみを使ってモグラの折り紙を教えてもらったことを思い出し、カエルくんはスケートを教えてもらったことを思い出し、キツネくんはネクタイの結び方を教えてもらったことを思い出し、ウサギ夫人はウサギのジンジャーブレッドの焼き方を教えてもらったことを思い出すのでした。冬から春になり、丘の上を歩いていたアナグマさんを思い出したモグラくんは、この素晴らしい思い出とアナグマさんに感謝するのでした。
人が死んだときに、唯一残るのは思い出。それがうまく表されている絵本だと思いました。アナグマさんが見た夢が何だかイザナギイザナミの物語を思い出させ、この世とあの世を分かつトンネルが出てきているのが何ともすごいと思ったし、それぞれの持つ思い出を聞けば聞くほど自然と涙が出てきて、この本を絶賛している人たちの気持ちがわかりました。大切な人が亡くなり肩を落としている人がいたら、そっとこの本をプレゼントするのもいいなあと思った絵本です。
村上春樹が訳しています。1964年に出版されて以来世界的なロングセラーで、30以上の言語に訳されています。リンゴの木と一人の少年の物語です。少年が成長するにつれて木は彼に必要なものを生涯にわたり与え続け、そこに無償の愛を見出してしまいます。
村上春樹があとがきで「そこにはできあいの言葉ではすらりと説明のすることができない、奥行きのある感情が込められています。美しい感情があり、喜びがあり、希望の発芽があるのと同時に、救いようのない悲しみがあり、苦しい毒があり、静かなあきらめがあります。それらはいわば、人間の心という硬貨の裏表になったものなのです」と書いています。この物語にはそういったものが含まれています。
短時間で簡単に読めるけれどなかなか奥深いなあと思いました。たくさんの人が評価し長い間読み継がれているものはたとえ絵本であっても素晴らしいんだなあと思いました。子供ばかりか大人が読んでもいいものです。
>nice!をくださった皆様、ありがとうございます。
by naonao (2015-05-30 22:42)