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波紋 [日本映画 ドラマ]

ニッショーホール(旧ヤクルトホール)で日本映画「波紋」を観てきました。

波紋

(Filmarksから拝借)

2023年の作品。荻上直子監督作品。現代社会の抱える問題(震災、新興宗教、老々介護、障害者差別など)に次々と翻弄される主婦の姿を描くドラマ。「かもめ食堂」「めがね」「トイレット」「彼らが本気で編むときは、」など好きな作品ばかりの荻上直子監督の映画なので期待して観ました。今回は映画の後に舞台挨拶があり荻上直子監督の他、主演の筒井真理子さん、お笑い芸人のみなみかわさんが登場。実は「かもめ食堂」「めがね」「トイレット」も試写会で観てその時も荻上直子監督の舞台挨拶付きだったので、監督を観るのはこれで4回目。何とラッキーで監督作品と監督に縁があるのだと改めて嬉しくなりました。相変わらず監督はお茶目な感じでトークも面白かったです。またヤクルトホールがニッショーホールに名前を変えたことも今回初めて知り、旧ヤクルトホールに足を運ぶのも何年振りだろうかと懐かしさで一杯になりました(虎門にあったニッショーホールはどうなったんだろうとも思いました)

3・11が起きマスクをして水を買いに走る主婦の依子(筒井真理子)。テレビの音声では安部首相が原発は「Under control」と言っている。夫の父の介護をしている中、夫(光石研)が突然の失踪。夫の父が亡くなったあと半年してから夫が家に戻ってくる。「ガンになった。家で過ごしたい」という。近所の猫が自分の家の庭に入り、せっかく作った枯山水が台無しになる。近所の人に言っても素知らぬ顔をされる。スーパーのレジ打ちのアルバイト先では傷ついた商品を持ってきて毎回「半額に負けろ」と大声で怒鳴る客(柄本明)がいる。九州に就職した息子(磯村勇斗)が里帰りで連れてきたのは聴覚障害のある息子より6歳上の女性。妊娠している、そして結婚するという。夫が失踪してから入会した新興宗教先(キムラ緑子、江口のりこ、平岩紙がその幹部や会員役)ではたくさんの聖なる水を手に入れ、祈り、集会に参加し、踊り、ホームレスに食事を配っている…。

澱のように溜まっていく日常生活のイライラやモヤモヤ、波紋を依子は新興宗教に走ることで解決しようとする。聖なる水を買い特別だという水を分けてもらいながら、毎日の祈りと何かにつけその水を自分の周りにスプレーして清めようとする日々。ガンの認可されていない薬を使うために夫に大金が必要で、夫は「おやじの金は結構残っているだろう」と言う。バイト先の清掃するおばちゃん(木野花)に「体を動かすといい」と言われ同じようにプールに通い、よく話をするようになる…。彼女の一言「復讐しちゃえばいい。やっちゃえばいいのよ」みたいな発言で、依子は夫の歯ブラシで洗面を洗い素知らぬ顔をし、スーパーでは「お客は神様だろう」と怒鳴る客に「私の夫はガンなんです。神様なら何とかしてくれますか?」と言い放ちその客を手ぶらでそそくさと帰らせる。ちょっとした復讐が日常の息苦しさに風穴を開けて、少し心地いいものになる。最後、夫が亡くなると息子に「昔みたいにフラメンコやれば?」と言われ、喪服のままその場でフラメンコを踊り出す依子。気分爽快で思わず踊り出したような感じ。

時々セリフにクスッと笑え、そのセリフの数々がいかにもこの監督らしいなあとやはり思いました。また今までの映画は優しさとか癒しとか時のゆっくり流れる感じが必ず感じられ、とっても心地よくほのぼのしていたのですが、今回はちょっと毛色が変わっていてそういうものではなかった。初めからイライラ、モヤモヤが周りにたくさんあって、それをちょっとだけ気のすむように行動したり言葉にしたりすることで気分がスッキリする、そういう映画でした。あまり重くないクスッと笑いに変えているのがとっても良かった。これはこれでまた良き映画。また木野花演じる清掃のおばちゃんの家がごみ屋敷で、「息子が一人いるけど戻ってこない」と言っていたのに既に故人となっていたのにはちょっとグッときました。人それぞれに何かしらを抱えながら生きている。そして新興宗教先での踊りは違和感あったけど、そういえば「めがね」でも皆で変な踊りを踊っていたなと思い出しました。「めがね」の踊りは笑えて面白かったけど。依子のフラメンコは彼女の心の内が表現されていて結構すっきり、良かったです。naonaoお勧め度★★★★

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naonao

>nice!をいただき、皆様ありがとうございます。
by naonao (2023-05-15 19:24) 

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