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トウキョウソナタ [日本映画 賞受賞]

「トウキョウソナタ」を一ツ橋ホールで観てきました。
公式映画サイト:http://tokyosonata.com/index.html
イベント付きの試写会で、会場内に入ると白いグランドピアノが。次男役の井之内海くんと映画の中で実際にピアノ演奏したピアノ小学生部門で全国1位の高尾奏之介くんがゲストで、インタビューとピアノ演奏(ドビッシーの「月の光」やショパンの「木枯らし」)がありました。ドビッシーの「月の光」はもともと好きなのでうっとりと聞きほれました。小学生でも侮れない。素晴らしい演奏でした。
この映画はカンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞受賞作品。東京で暮らす4人家族の物語です。リストラされて家族の誰にも言い出せない父、ドーナツを作っても食べてもらえない母、アメリカ軍に入隊する長男、ピアノを隠れて習いだす次男。家に帰っても家族はみんなバラバラで、ちぐはぐ・・・・。
父に香川照之。母に小泉今日子。突然家に押し入り金を出せと脅す強盗に役所広司。次男がこっそり習うピアノの先生に井川遥が出演。子供たちはオーディションで選ばれた小柳友と井之脇海。
父は、同じようにリストラにあった昔の親友に突然会います。同じように家族に相談できずにいる友人と一緒にホームレスの炊き出しの食事にありついたりします。その友人はリストラされたことを周りから悟られないように携帯電話に着信音を1時間に5回も設定していて忙しそうな人を演じたりしているのですが、最終的には奥さんも巻き添え心中してしまいます。それからハローワークに何度も通う中で父は何とか大型スーパーの掃除員の仕事にありつきます。あるとき仕事中札束の入った封筒を見つけ、それをポケットに収め足早に歩き始めます。「一からやり直したい」と何度も叫びながら。そして車にぶつかり道端に倒れます。朝までずっと気を失って道端で寝てます。朝、気が付いて家に戻ります。
次男は「ピアノを習いたい」といいますが、両親に反対されます。給食費を学校に持っていかずにピアノの月謝にあて、こっそりとピアノを習い始めます。ピアノの先生から「あなたは並外れた才能があるのでピアノ専門の中学校に進んだほうがいい」と言われるのですが、ピアノのことは両親には言い出せません。そのうちピアノのことが父にばれて殴られ、二階から転げ落ち救急車で病院へ。
あるとき「もう塾もイヤだし習い事も学校もイヤだ」という友人と、友人の親から一緒に逃げます。友人は急に走ったので喘息の発作を起こします。隠れながら何か飲み物を買ってこようとする間、その友人は親に捕まってしまいます。そのあと面白くなくて無賃乗車をし、警察につかまり牢獄に一晩入れられます。朝、釈放され、次男もまた朝に家に戻るのです。
母は父(夫)がリストラされたのではないかということをホームレスに混ざって並んでいたのを見て、うすうす知ってますが口には出しません。長男はいきなりアメリカ軍に入隊したいと言い出し、父(夫)は怒って「出て行け」と怒鳴ります。そして実際長男はアメリカに飛び入隊してしまうのです。ニュースでは日本人志願者の部隊を派兵すると言っており、夢の中で長男が疲れきって家に戻る夢を見ます。外務省に電話をしても安否の確認は取れないと言われます。
あるとき強盗が家に侵入し、車でその強盗と海辺まで行くことになるのですが、そのときそっと囁きます。「朝目覚めてみたら、今までのことは全部夢で、全く今の自分とは違う人になっていた」と。海を見ながら今までのことを回想し号泣したりもします。一晩そこで過ごし朝、母もまた家に戻ってきます。
現代社会を表し、今の家族のそれぞれの心配を表し、重苦しい憂鬱みたいなものが覆いかぶさり、ちょっと見ていて苦しい映画でした。でも時々笑わせてもくれるので、重いけれどちょっと笑え、淡々と描かれてるのが救いでした。一晩家が空になり、それぞれがそれぞれの時間を過ごしてから朝帰りし、そしてみんなで食卓を囲って朝食を取りますが、それはまた家族の再生を意味するような、そんな暗示のシーンでした。
長年の鬱積した疲れ、まるで袋小路に入ってしまってどこに行ったらいいのかわからなくなってるような混乱、そして希望を見出せない重苦しさが、何かをきっかけに一筋の光を見つけて再スタートできるというような映画になっています。最後にピアノ演奏される次男のドビッシーの「月の光」がそれを象徴してました。
ちょっと唐突な場面もたくさんあり、ブツブツ場面を切ってしまってるみたいなところもありましたが、テーマがテーマだけに何となく突き刺さってくるところがある映画でした。
トウキョウソナタ(竹書房文庫た1-1)

トウキョウソナタ(竹書房文庫た1-1)

  • 作者: 田中 幸子
  • 出版社/メーカー: 竹書房
  • 発売日: 2008/09/18
  • メディア: 文庫

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コメント 12

miopapa

このところ、
 小泉今日子さんが結構出てくるんで楽しみですし
 役所広司さんが渋くて言い演技するようになり
 大好きなんですが・・・
by miopapa (2008-09-13 17:18) 

nomame

香川照之さんに小泉今日子さん、
更には役所広司さんという味のあるキャストですから、
ぜひ観てみたいんですけど、ちょっと重そうですね。(苦笑)

by nomame (2008-09-13 18:03) 

Mimosa

家族がバラバラ・・・という、今の世の中にはよくありがちな設定の映画ですね。確かに、内容的には重く決して明るくはないけれど、現代家族をテーマにしたいい映画のような気がします。
最後は、ピアノ演奏と共に家族揃って再スタートが出来るという明るい結末なのでしょうか!?見てみたくなりました!
by Mimosa (2008-09-14 01:21) 

naonao

>miopapaさん、いつもありがとうございます。
キョンキョンも役所広司もたくさんの映画に出て大活躍ですね!
二人とも演技決まってました。

>nomameさん、いつもありがとうございます。
たぶん、現代社会を扱っていて他人事に思えないところがグサッと来て重いんですよね。でも一筋の光が最後に見られるので大丈夫です。

>Mimosaさん、いつもありがとうございます。
いろんなことを考えさせられると思います。
今に生きる人にはやはり関わってくる問題が多いので。
是非見てください。

>toshiさん、xml_xslさん、MirrorballMさん、miffyさん、いつもnice!ありがとうございます。

by naonao (2008-09-14 10:34) 

たいちさん

演技派俳優が揃っていますね。家族をテーマに音楽の美しい映画らしいですので、機会あれば観たいですね。
by たいちさん (2008-09-14 16:43) 

コッスン

一ツ橋ホールの試写会でいい場所ってありますか?
アイアンマン行きます
by コッスン (2008-09-15 01:04) 

duke

予告編が辛そうでした。でもぐーぐーよりも、興味があります^^
by duke (2008-09-15 20:16) 

naonao

>たいちさん、いつもありがとうございます。
確かに演技派俳優揃いでしたね。
ドビッシーの「月の光」が今も頭の中をぐるぐる廻ってます。

>コッスンさん、ありがとうございます。
一ツ橋ホールのいい場所って特にわかりませんが、私は後ろのほうが好きなのでいつも後ろに座って観ます。アイアンマン私も別の会場に観に行く予定です。

>dukeさん、いつもありがとうございます。
グーグー・・・のほうはゆるゆる系ですが、こちらはゆるゆるしてられません。
ちょっと胸にぐさっとくる感じがあります。現代人なら誰でも無縁でいられないので。

by naonao (2008-09-15 21:19) 

toraneko-tora

長らくご無沙汰しました
明日(9/17)から再開いたします
引き続きよろしくお願いします
by toraneko-tora (2008-09-16 11:43) 

naonao

>toraneko-toraさん、いつもありがとうございます。
こちらこそよろしくお願いします。

>BASSDAYさん、くろたさん、nice!ありがとうございます。
by naonao (2008-09-18 21:13) 

naonao

>ねこプリンさん、nice!ありがとうございます。
by naonao (2008-09-23 20:44) 

naonao

>りゅうさん、nice!ありがとうございます。
by naonao (2008-09-29 18:44) 

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