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狩りの思考法 デカメロン デカメロン・プロジェクト [本]

最近読んでた本です。

狩りの思考法 (アサヒ・エコ・ブックス)

狩りの思考法 (アサヒ・エコ・ブックス)

  • 作者: 角幡 唯介
  • 出版社/メーカー: 清水弘文堂書房
  • 発売日: 2021/10/29
  • メディア: 単行本

好きな角幡氏の新刊。コロナを全く知らず浦島太郎状態でグリーンランドにいたらしい。海外に出てればそういうこともあるよね、と思った。私も海外から旅行して日本に戻ってくると、当時ちびまる子ちゃんとかイチローとか、野茂とか全く知らずに帰国していて日本中がそのことに沸いているのに驚いたことがあった。

今回のテーマはイヌイットの人たちの狩りについての考察でしたが面白かったです。イヌイットは自殺率が高くて(本多勝一氏の「カナダエスキモー」で1958年~61年のデータで10万人当たりの年間死者数はイヌイットが575人、日本やデンマーク、スイスなどは20人)死をタブー視していないという。「ナルホイヤ(わからない)」「アンマカ(たぶん)」という言葉を多用し、それは「未来を正確に予期することは人間にはできない、という彼らの生の哲学をあらわした言葉」だという。予定を立てればそれを達成させるために現在をおざなりしてしまう現代人とは違い、「今を生きる漂泊者」であり、「生が躍動する」生き方で固定観念を払拭しその都度「自分の頭で考える」人たちなのだという。「今、目の前に起きている現実に生きる瞬間こそ、人間の生が動き出す始原があるはず」という。まさに今に生きろってこと、禅の教えにも繋がるなあと思いました。また「量子力学的超越者を神と呼んだのでは」といい、大自然の中に生きる人ほど神みたいなものを感ぜざるをえないだろうなあと思います。角幡氏も3回くらい冒険中死にそうになった経験があり、きっとそういうものを感じているだろうと。彼がやっているのはまさに人類学者のやるようなことだし、その上考察が深く読んでて楽しかったです。


デカメロン 上 (河出文庫)

デカメロン 上 (河出文庫)

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2017/03/07
  • メディア: 文庫
デカメロン 中 (河出文庫)

デカメロン 中 (河出文庫)

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2017/04/06
  • メディア: 文庫
デカメロン 下 (河出文庫)

デカメロン 下 (河出文庫)

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2017/05/08
  • メディア: 文庫
古典のボッカチョ著の「デカメロン」。ペストが流行った14世紀のヨーロッパ。イタリアフィレンツェでペストから逃れるためにフィレンツェ近郊に集まった男女10人が、10日の間にかわるがわる100の物語を語るという物語です。デカメロンとはギリシャ語で、デカ=10、メロン=日の意味。コロナ禍にちょうどピッタリなのではないかと思い読みました。面白かったです。冒険話もあれば恋愛話も。艶話、純愛、悲恋…と様々。そして登場人物も、王や王妃、お坊さん、商人、軍人、裁判官、学者、左官屋、異邦人、海賊などなどバラエティに富んでいます。訳者の平川祐弘さんが後書きにいろいろな情報を載せていて、「今昔物語」が時代的にも近く、ただ「今昔物語」が宗教説話に対して「デカメロン」は世俗物語であること、田辺聖子さんの「ときがたりデカメロン」の紹介、「神曲」を書いた詩人ダンテと「デカメロン」を書いた散文作家のボッカッチョの格差、翻訳にあたっての苦労なども載せていて興味深く。ボッカッチョが「神曲」を意識してこの「デカメロン」を書いているらしく、「神曲」も今更ながら読んでみようかなあと思いました。他にも「源氏物語」との比較や「カンタベリー物語」でも「神曲」を意識した内容があり、ボッカッチョと井原西鶴の比較など巻末の解説には様々な面白い指摘もありました。「デカメロン」をきっかけにまた色々読んでみたくなりました。


デカメロン・プロジェクト ; パンデミックから生まれた29の物語

デカメロン・プロジェクト ; パンデミックから生まれた29の物語

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2021/12/04
  • メディア: 単行本

ニューヨーク・タイムズ・マガジンが編集しまとめた「デカメロン・プロジェクト」。古典の「デカメロン」にヒントを得て、このパンデミック禍に29の物語を国際色豊かにいろんな人種のいろんな街の人々と様々な様子を、著者もその翻訳家も変えて載せています。実はこの本、たまたま見ていたテレビに女優のミムラさん(今は改名して美村里江さん)が出演していてこの本をお勧め本としてかなり前に紹介していたのでした。それもあって読んでみようと思いました。カラチ、ニューヨーク、ロス、ダブリン、グラスゴー、カサブランカ、オスロ、バロセロナ、北京…都市名だけでもかなりたくさん出てきます。マッサージ、映画、音楽、隣人、元夫、刑務所、アイスクリーム…と話の内容も本当に十人十色。さすがニューヨークで編集されたって感じのニューヨークの街を感じさせる本でした。旅行者としてニューヨークに1か月居たことがあったけど、街歩きするだけでも様々な人種が闊歩していてその雰囲気を思い出させてくれる本でもありました。

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naonao

>nice!をいただき、皆様ありがとうございます。
by naonao (2022-01-28 17:18) 

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