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ラサへの歩き方 祈りの2400km [中国映画]

中国映画「ラサへの歩き方 祈りの2400km」(原題:岡仁波斉)(Paths of the Soul)を観ました。

ラサへの歩き方 祈りの2400km

(Filmarksから映像拝借)

2015年の作品。IMDb評価は7.5。ロードムービー。チベットの東のカム地方(四川省)の小さな村に住む11人の村人が1か月かけてラサ、カイラス山を五体投地で向かう巡礼の物語。私が大好きなチベットエリア。チベタンに欠かせない祈り、巡礼の旅でチベットの旅の思い出が数々蘇りました。彼らと一緒に旅した気分になり、またチベットに行きたくなる映画でした。

村の生活。朝からツァンパ(麦こがし)を食べている。一階でヤクを飼い、ヤクに薪を運ばせる。タンカ(仏教絵画)が飾ってある寺ではバターランプの灯の中お坊さんがお経を上げ、人々はコルラ(寺の周りをぐるぐる回り祈る)をしている。外にはタルチョ(お経の書かれた旗)がたなびく。正月になり皆でモモ(チベット風餃子)を作っている。もうこれだけでもチベットが十二分に思い出される。

「巡礼の旅に出かけるそうだけど、一緒にうちの人も連れて行ってくれないかな?」と村人がどんどん参加して総勢11人で巡礼の旅に出かけることに。トラクターにテント道具一式、食料を乗せ、他の人はヤクで作った長いエプロンつけて手にはサンダルにも似た板をつけていざ出発。おじいさんはマニ車をクルクル手で回しながらお経「オムマニペメフム」を唱えながら歩くだけだけど、他の人は五体投地。手を頭の上に挙げて手を打ち、額辺りで手を打ち、胸の前でもう一度手を打ち、そして地面にヘッドスライドしてうつ伏せ状態になり、立ち上がりまた同じことの繰り返し。この五体投地の方法でお祈りをしながらはるか遠くまずは1200km先のラサまで行く。ラサの先は聖山カイラス山(カンリンポチェ)まで更に1200km。

道中の景色が美しい。私はゴルムドからナチュを通ってラサまで行きその後シガツェに行ったけど、その道中観た風景にも重なりました。山々と青い空と雲と川と草原と…。5色のタルチョの旗が風ではためいていかにもチベットの風景。これぞチベットです。トラクターにも良く乗った気がする。このトラクターのエンジン音が懐かしい。

日中彼らは五体投地で道を進み、夕方テントを張って夜はストーヴを囲みながら皆で祈りのお経を上げる生活。途中彼らにいろんな人との出会いがある。そこに住むチベタンにお茶に招かれたり、一人で住むおじいさんに家が広いからと家で泊まれと言われ「人の健康や幸せ、繁栄を願うこと」「額をしっかり地面につけること」など注意を受けたり、同じように五体投地で巡礼する人をお茶に招いたり。初っ端から産気づいて出産した若い奥さん。子供を産んでもそのまま巡礼を続ける。子供はトラクターに乗せ、自分は五体投地。岩が落ちて足を怪我する男性。「父も祖父も自分も悪いことは何もしてないのになぜ自分は怪我してるんだ?」と嘆き、他の村人から「2,3日休もう」と言われカーペットを干したり髪の毛を洗ったりみんなでダンスをしたりしてくつろぐ日もある。水浸しの道でも雪道でも、トラクターが車にぶつけられダメになってもとにかく進む、進む。

ポタラ宮殿が遠くに見えると、一同揃って手を合わせる。またジョカン(大昭寺)でバターランプの灯の中お坊さんたちが熱心にお経を挙げている。ソンツェン・ガンポに嫁入りした唐の玄宗皇帝の娘が持参した大切な釈迦牟尼像の姿もちらりと映っていた。カタ(祝福用の布)をお坊さんから一人一人かけてもらい、吉祥と幸せを受ける。宿にいると五体投地した1万回分だか10万回分だかを分けてほしいと願い出る女性がいてその代わりここの宿代は彼女が負担するという。村人は快くその申し出を受ける。夜、ジョカンの周りのバルコルと呼ばれる道を皆で五体投地する。オムマニペメフムの入った街灯が輝いていた…。

ポタラ宮殿もジョカンも懐かしい。特にジョカンの前やジョカンの周り=バルコルで五体投地する人がたくさんいて、夕方初めてジョカンの前で五体投地する人々を見た時には自然と涙が溢れた。祈りの姿がこれほど美しいとは、と思った。何だかとっても衝撃的だった。自分も彼らと一緒にジョカンの前で五体投地をしてみたが10回やるだけでもすぐ息が上がった。ラサは海抜4200mだから無理もないのですが。ちょっと小走りするだけで意気が上がり海抜のことを忘れて走ると痛い目によく遭っていました。またジョカンの屋上で景色を眺めていたら、ジョカンのお坊さんに手招きされてお茶をご馳走になったこともありました。お坊さんたちは、小さな仏像の中に入れるお経を書き、そのお経を仏像の中に入れる作業をしていた。1991年の話なのでもう32年前のこと。とっても懐かしいです。映画では夜のバルコルを映していて店が閉まっているのでにぎやかな風景は観られなかったけれど、オムマニペメフムの街灯が美しく輝いているのがとっても近代的になったとちょっとショックでした。バルコルではダライ・ラマ法王の若い時の写真を見つけて買いました。その後ずっと旅の間中持ち歩いていたのですが、実は買ったときにはダライ・ラマ法王だとわからずただ格好いい、ハンサムなお坊さんだと思ってミーハー気分で買いました。あとからわかる人に聞いたら「それはダライ・ラマ法王の若いころだよ」と言われびっくり。しかもちょっと霊感ある人に「この人はこの世の人じゃないけど持ち歩いて旅の中で守ってくれてるよ」と言われたこともあり、確かにダライ・ラマ法王は観世音菩薩の生まれ変わりと言われているのでこの世にいないはずの人で、自ら人々を救うためにこの世に降りてきたと言われてるので、そうなのかなあと思ったこともありました。今でもこの写真は大切にしまってあります。

さてカイラス(カンリンポチェ)に向かう村人。カイラスをぐるぐる回っているとき、村人の一人、叔父さんが亡くなります。鳥葬を匂わせ鳥が遺体とお経を上げるお坊さんの頭上はるか上をぐるぐる回っています…。これを観てラサにあるセラ寺かデプン寺の裏山を思い出しました。このどちらかの寺の裏山は当時鳥葬に使われている場所だったのでちょっとだけ見に行ったことがありました。野良犬がうろうろしていて怖かった(狂犬病)のを覚えています。ちょっと何かの残骸が残っていました。ラサからシガツェかどこかに行くバスが早くて、中国はどこでも北京に合わせた時間なので朝の7時と言われても真っ暗で(実際には朝3時とか4時くらいなのではないだろうか?)野良犬に囲まれて吠えられたこともありました。怖すぎた。現地の人が救ってくれましたが。ラサというと野良犬を思い出します。またチベットには1か月くらいいたのですが、その間夏のショトン祭(ヨーグルト祭り)があり、どこの寺でもタンカ(仏教絵画)のご開帳の時期で、チベタンが一番楽しい時期でピクニックをして寺ごとのご開帳を観てお坊さんたちによるダンスを観る時期でとっても華やいでいました。いい時期に入って旅行できたのだと思います。ジャッキー・チェンと良く組んで映画に出てたユン・ピョウが映画撮影に来ていて握手して写真を撮らせてもらったこともありました。ユン・ピョウ格好良かった。柴田恭平に似ている香港スター。そこにいた中国語できる日本人旅行者が口利きをして映画クルーに頼んでみんなで夜食のおこぼれをご馳走にもなりました。楽しかったなあ。ツァンパ、モモ、トゥクパ(チベット風うどん)カプセ(小麦粉で揚げたお菓子)などチベット料理も食べたくなった。懐かしくて懐かしくて色々蘇って私にとっては最高の映画でした。naonaoお勧め度★★★★★[王冠]

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naonao

>nice!をいただき、皆様ありがとうございます。
by naonao (2023-08-03 16:30) 

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