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イル・ポスティーノ [イタリア映画]

イタリア映画「イル・ポスティーノ」を観ました。1994年の映画。イギリスと日本で外国映画賞をそれぞれ獲っています。


イル・ポスティーノ オリジナル完全版 [Blu-ray]

イル・ポスティーノ オリジナル完全版 [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: TCエンタテインメント
  • 発売日: 2016/07/06
  • メディア: Blu-ray



1950年代イタリアのナポリ島に住む郵便配達人と、チリ人で政治家、外交官、ノーベル文学賞を獲った詩人のパブロ・ネルーダとの交流の物語。


漁師の島にも拘わらず、漁師になることを嫌い郵便配達人になるマリオ(マッシモ・トロイージ)。そしてチリを追われて一時避難する場所をイタリアのナポリ湾の島に決めて移ってきた有名詩人のパブロ・ネルーダ(フィリップ・ノワレ)。毎日パブロの郵便を配達するマリオはパブロから詩の作り方や、隠喩を学び、いつしかパブロに何でも相談するようになり、恋したベアトリーチェ(マリア・グラツィア・クチノッタ)に詩を送る。すると見事恋は実って結婚するが式当日、チリに帰国を許されたという電報をパブロが受け、マリオとパブロの交流は終わりを迎える。そして5年後パブロがイタリアのナポリ湾の島のマリオを訪ねるとショッキングなことが判明した…。


海に囲まれ、島の田舎道やら漁港の様子、島唯一であろう居酒屋兼レストランやら、マリオの家、パブロの高台の家などイタリアの島ののんびりした感じがとっても良かった。パブロから詩を学ぶマリオですが、パブロがいなければベアトリーチェと結婚できなかったかもしれず、またパブロに影響されたのは詩ばかりでなく、共産主義的な思想も学んでいって5年後はすっかりその思想に取りつかれていて、共産主義のデモの中で命を落としてしまうのが、何とも悲しく、ショッキングでつらい映画でした。


「島で好きなところは?」と聞かれてカセットに当時好きだったベアトリーチェの名前を答えるマリオ。でもパブロが去ったあと、自分で島の好きなところを音に残しパブロに送ろうと思うのです。それは海の音、波の音、風の音、教会の鐘の音、司教の声、ベアトリーチェが宿した子供の心音…。このカセットを送ることが叶わず、ベアトリーチェが大切に保管していて再訪するパブロと一緒にこのカセットを聞きます。パブロがこの島を去ってからのマリオの5年を集約するようなカセットに残された録音…。


この映画は「ニュー・シネマ・パラダイス」に並んで好きな映画だなあと思っていたら、パブロ役のフィリップ・ノワレは「ニュー・シネマ・パラダイス」にも出演していることがわかり(映写技師のアルフレードだった!、確かに言われてみると、です)また主役のマリオ役のマッシモ・トロイージはこの映画を撮っている最中に倒れ、映画撮影終了後12時間後に41歳の若さで亡くなったとのこと。そういったことも含めて余計にこの映画が愛おしいと思いました。


すごーく、すごーくお勧めです。

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つれづれノート36、品川猿の告白、大地 [本]

最近読んでいた本です。


内側に耳を澄ます つれづれノート36 (角川文庫)

内側に耳を澄ます つれづれノート36 (角川文庫)

  • 作者: 銀色 夏生
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/10/24
  • メディア: 文庫

つれづれノートのシリーズ。いつものようにあっという間に読んでしまいました。もう他へはいろいろ体験しにいかない、気になることを求めて出かけない、何故なら切りがないから。自分の考えでやっていくしかないと悟る著者。東京にいるときにはジムのプールで泳ぎ、実家があり自分で建てた家がある宮崎に頻繁に戻っては庭作りに精を出す著者。「力をぬいて」をちょうど執筆中だったため、その執筆のことなんかも書かれていて、一人暮らしをしていてそのまま亡くなってしまうっていうのも幸せなことだ・・・みたいなことをジムの人と交わし合って、確かにそう言う一面はあるなあと思ったり、また先日メキシコの死者の日を扱った「リメンバー・ミー」を見たので、そのタイトル名をこの本の中で再び見つけて嬉しくなったり(マリーゴールドの花がメキシコのお墓に飾られていて、タイでもマリーゴールドだったなあと思い出したり、メキシコのオアハカあたりにまた行ってみたいなあと思い出していました)、インドカシミール、ラダックのニュースの事など自分の興味あることが出てくると楽しくなってしまう私が相変わらずいました。

20年前2000万円で買った金の延べ棒が、売っしまったけれど今も持っていれば6500万もしたはずと書いてあったのにはびっくりしたけれど、もうそれがないから(本も売れなくなったから)東京もひき払って宮崎に戻る決心をした著者。それはそれとしていいと自然に受け入れている姿も好感持てました。

つれづれノートだけは今後も続けて書いてほしいです。



文學界 (2020年2月号)

文學界 (2020年2月号)

  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2020/01/07
  • メディア: 雑誌

村上春樹の「品川猿の告白」読みたさに手に取った文学界。羊男みたいな、品川猿。この際、羊でも猿でもどちらでもいい。品川猿は女性の名前を盗んでいると告白した。不思議な世界がこの短編にも広がっていました。彼の短編、もっと読みたいなあと思いました。


大地(一) (新潮文庫)

大地(一) (新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/03/06
  • メディア: 文庫
大地(二) (新潮文庫)

大地(二) (新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/03/06
  • メディア: 文庫
大地(三) (新潮文庫)

大地(三) (新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/03/06
  • メディア: 文庫
大地(四) (新潮文庫)

大地(四) (新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/03/06
  • メディア: 文庫


パール・バックの遺作の新訳が出て先日読んだばかりですが、結構いいなあと思えたので彼女の代表作「大地」を読みました。今まで著者の名前と本の題名だけは知っていたけど読んだことがなかったので。初めて読むと面白い、面白い。ピューリッツァー賞、ノーベル賞を獲るだけの大作でした。筆の確かさ、描き方、ストーリー展開に長編もあっという間に読んでしまいました。とにかく面白いのでどんどんページが進むのです。

「大地」「息子たち」「分裂せる家」の3部作からなり「土の家」3部作とも呼ばれるこの全4巻。19世紀から20世紀にかけて中国を舞台に王龍一家、その息子3人、そしてまたその孫たちへと連なる大河物語です。親がどんな犠牲を払って蓄財し財産を残しても結局子供たちはその苦労を知らず簡単に消費してしまうし、人があっという間に年を取り、若者の時代となり、物事はどんどん進化して止まない。当たり前ですがそうなのだなあと思いました。昔の人たちの苦労に頭が下がるし、今に生きている人たちはご先祖たちに感謝しなければいけないなあと思いました。一代にして巨万の富を築いた苦労多い王龍の世代の第一巻は特に圧巻です。またその子三男の王虎はその地域で将軍のような地位に昇りつめますが、戦争に次ぐ戦争が描かれているので、ちょっと辟易でしたが、この著者の特徴であるスピード感があるので個人的にあまり好きでない戦争に次ぐ戦争の時代の描写でさえあっという間に読めてしまいます。そして第3巻、4巻の王淵(王虎の息)へとバトンタッチされ、彼はアメリカ留学、そして帰国し新しい中国を担う若者へと育ちます。

中国を舞台にした本はほとんど読んだことがないのですが、それでも昔ベストセラーとなった文化大革命の時代を描いた「ワイルドスワン」を読んだことを思い出し(この作品も面白くて夢中になって読みました)、両作品にも出てくる纏足の風習などもまた思い出したのでした。

時代がどんどん変わっていく。このことが強く認識させられる作品でした。また色んな人物の生き様が様々で、その境遇に思いを馳せました。

この時代にあってのこの今の生き方ができることを感謝したいなあと思うのでした。

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あん [日本映画 ドラマ]

河瀨直美監督、ドリアン助川原作、樹木希林主演の映画「あん」を観ました。



あん Blu-ray スペシャル・エディション

あん Blu-ray スペシャル・エディション

  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • 発売日: 2016/03/16
  • メディア: Blu-ray

グーグルでの評価満足度が91%とあり、どんな作品なのだろうとお気楽に観ていましたが、結構ずしりと胸に来る人生を考えさせられる映画でした。

桜が満開の季節に、ふらりと訪ねてきたあんこ作りの得意な徳江(樹木希林)が、どら焼きやの店主(永瀬正敏)に自分を雇ってほしいとお願いし、徳江は雇われ彼女の作るあんこのお陰で店が繁盛するのもつかの間、徳江がハンセン病だとの噂が広まり店にお客が来なくなります。徳江も店に来なくなり、どら焼きやの店主と店に通っていた中学生のワカナ(内田伽羅)は彼女を訪ねるのです。そして2度目に訪ねたときには既に彼女はこの世を去っていました。


影のある人生に失敗して半ば投げやりになっている店長役の永瀬正敏の演技も良かったし、勿論徳江役の樹木希林は文句なしに素晴らしかったです。中学生の内田伽羅って誰?と調べたら、樹木希林の孫(つまり本木雅弘、もっくんの子供)であることがわかりました。樹木希林と仲の良い浅田美代子も出ていたし、市原悦子も出ていて皆うまかったです。


映画の中で映る桜が印象的でそしてまた格別美しかったです。「働けて楽しかったよ、店長さん」と何度も繰り返し徳江がいう言葉に自然に涙が溢れました。ハンセン病なので隔離され外で働くことなど許されず、70半ばになって初めて外で働き、その喜びに溢れているのです。働けて当たり前、いやむしろ働くことに時々半ば嫌気が刺している自分にとっては突き刺さる言葉でした。ハンセン病はライ病とも言われて、インドを旅行していた1990年代にたくさんのライ病患者を見ました。インドでは人目につかないように隔離することなくそのままで、乞食の中にたくさんのライ病患者がいました。指がない、鼻がない、足がないので胴体をコロコロの着いた板の上に乗って移動してます。初めて見た時は衝撃的でした。彼らは近づいてきて施しを求め、インドの人たちはお金を普通に彼らに恵みます。多くの旅行者もそれに習い、私もそれに習いました。


また「私たちはこの世を見るため、聞くために生まれてきた。この世はただそれだけを望んでいた。だとすれば、何かになれなくても、私たちには生きる意味があるのよ」という言葉がとっても良かったです。

つい最近、Eテレでやっている「猫のしっぽ、カエルの手」という番組のベニシアさんが、イギリスの貴族を離れてアイルランドへ移って暮らしていた亡くなった母の家を訪れている番組を観ましたが、ベニシアさんのエッセイの中に、人生の中に何に価値を置くかみたいなものがあり、それは何者かになれたとか偉大なことを成し遂げたとかそういうことでなく、どれだけ自分に満ち足りて幸せであったか、そういうことに価値を置きたいという言葉に触れたばかりだったので、映画の徳江の言葉とベニシアさんの言葉に共感できるなあと思いました。


桜の咲くこの時期、この映画はお勧めです。

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ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方 [アメリカ映画 ドキュメンタリー]

「ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方」を有楽町よみうりホールで観てきました。



ポスター画像 



映画公式サイト:http://synca.jp/biglittle/


ドキュメンタリー。200エーカー(東京ドーム17個分)の荒れた農地を究極の農場へと作り替えた8年間の夫婦の奮闘の記録です。


池を作り土地を耕し、畑を作り、果樹園を作り、ひよこを鶏へと孵し、豚のお産を手伝い、果物の出荷、卵の出荷、害獣や害虫に頭を悩ます日々。

豚、ひよこ、鶏、羊、犬、狼、鷲、アヒル、カタツムリ、ムクドリ、ガチョウ、てんとう虫、蜂、つちねずみ、蛇…とたくさんの動物や虫が出てくる。

たくさんの植物や木を植えれば、必ずや害獣、害虫が食い荒らす。大切な鶏もやられる。卵は市場に出せないし、フルーツも売り物にならない。

でも大量発生していたアブラムシはてんとう虫によって食われ、自分たちの手で駆除してたカタツムリはアヒルたちを放てば餌として食べてくれる。つちねずみが増えすぎてたくさんの木がやられて落胆しても、うまく使えば鶏を食べていた狼だってつちねずみを食べ応援してくれる。害獣害虫だと思っていたものは自然の摂理で秩序だって廻り、うまく活躍してくれる。

大自然の営み、その大自然の中に組み込まれて生きていくことの素晴らしさを大いに謳った映画でした。


私は都会生まれで都会育ちなので、とても大自然の中で生きていくことはできませんが、一つのサイクルで大自然が回っていて何も無駄なものはないのだと教えてくれます。大自然に生きてる人は見る必要はないかもしれませんが、私のような都会っ子は大いに見る必要がある映画だと思いました。


コロナウィルスで色んな映画の試写会も中止になっているこの頃ですが、この試写会はギリギリ2月の終わりに開催され見ることができました。3.11の東日本大震災のときもそうでしたが、色んな中止が悲しく鬱陶しく憂鬱で、気分が落ち込みます。いつまでこれが続くんでしょうか。


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赤ずきん [Leonardo DiCaprioレオ]

レオナルド・デカプリオが製作した「赤ずきん」を観ました。


赤ずきん [Blu-ray]

赤ずきん [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • 発売日: 2012/04/25
  • メディア: Blu-ray


アマンダ・サイフリット、ゲイリー・オールドマンが出演。監督は『トワイライト~初恋~』のキャサリン・ハードウィック監督。ダーク・ラブファンタジー。


狼にいつも悩まされている田舎の村を舞台に、狼退治に神父(ゲイリー・オールドマン)が招待され、そのうち狼に話しかけられて狼の言葉を理解したヴァレリー(アマンダ・サイフリット)は魔女扱いされるも幼馴染の恋人や婚約者に助けられるというストーリー。狼にかまれた人は人狼となり、最後は色んなことが明るみに。ヴァレリーの恋はいかに?また彼女の家の秘密とは?ちょっとしたサスペンス映画でもあります。


狼の動きがメチャクチャ速くていかにも作り物でそれがB級映画にしています。それでも面白かったです。いかにもトワイライトを作った監督映画の映画って感じでした。

魔女狩りがあった時代って、本当に怖いなあと思いました。魔女だと言われたヴァレリーは親しかった友人たちの本性を見ることになるのです。そのどろどろしさといったら。また派遣された神父は自分の妻さえも人狼だと疑い命を奪っています。恋は盲目どころか、悪魔退治も盲目です。

こういう怖い時代を経験して今に至っているのだなあと思いました。

人が殺され血を流し、映像も暗くて、人が人を疑い、どんよりしている怖い映画でした。そのためあまりラブファンタジーのほうには目が向けられませんでした。


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