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新カラマーゾフの兄弟 [本]

「新カラマーゾフの兄弟」を読みました。

新カラマーゾフの兄弟 上(上・下2巻)

新カラマーゾフの兄弟 上(上・下2巻)

  • 作者: 亀山郁夫
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2015/11/19
  • メディア: 単行本

 
新カラマーゾフの兄弟 下(上・下2巻)

新カラマーゾフの兄弟 下(上・下2巻)

  • 作者: 亀山郁夫
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2015/11/19
  • メディア: 単行本

ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」を下地に、「カラマーゾフの兄弟」を翻訳している亀山郁夫氏が書いた小説。舞台をサリン事件や阪神淡路大震災の起きた1995年の日本に置き、その13年前に起きた黒木家の父の兵午の死をめぐり、長男ミツル、次男イサオ、三男リョウ、使用人幸司を描くのと同時に、Kという大学教授が黒木家の家の購入とからませ、黒木家の父の死の謎にも関わっていく様子を描く。

上下巻合わせて1500ページ近くある大作でしたが、面白いので熱中して一気に読んでしまいました。原作を翻訳している亀山氏なので、「カラマーゾフの兄弟」の文章と同じリズムがありタッチがあり、その上にフョードル=兵午、ドミートリ―=ミツル、イワン=イサム、アリョーシャ=リョウ、スメルジャコフ=幸司、他にも母親(敦子、園子)、香奈、瑠佳などの女性たちや、リョウの尊敬する嶋教授など「カラマーゾフの兄弟」に出てきた登場人物たちを彷彿とさせる人物がずらりとこの小説でもちゃんと登場してきて、その話の筋に沿った動き、役割をしっかり果たしているのがとっても楽しかったです。

そしてKという大学教授は小学生の前では「イワンのバカ」と「カラマーゾフの兄弟」の大まかなストーリーを優しい言葉にして説明し、また大学生の前では「カラマーゾフの兄弟」の核心に迫る講義をするといった寸法で話を盛り込み、特にこの「カラマーゾフの兄弟」の父親殺しが登場人物の誰もが関わった未必の故意であり、「オリエント急行殺人事件」を思わせる悲劇のようだ、と語っているのが面白かったです。亀山氏はこの小説の中でKという登場人物を使って亀山氏自身をも登場させた感じがあり、この小説の中でKにいろいろ言わせたのだなあと思いました。そして「カラマーゾフの兄弟」をライフワークのようにしている亀山氏だからこそ書けた小説なのだと思いました。

またホメオメディというホメオパシーにも似た怪しいところで変な液体を飲んでKが幻視を見たり、登場人物の多くの人が夢を見て現実に示唆を与えていたり、イサムが幽体離脱を起こし悪魔と対話していたり、リョウが憑依を起こして幸司の言葉をベラベラ喋ったり、直観みたいなものを信じて物語を進めていきたいと願うような感じも良かったです。そしてボッシュの絵やピエタ像、砂の器、ヨブ記、遠藤周作の「沈黙」、村上春樹、バタフライエフェクトなど、自分の中では好きなキーワードがたくさんこの小説には出てきました。小説は「Kの手記」と「黒木家の兄弟」を交互に挟んで進んでいくのですが、進み方がまるで私が好きな村上春樹の小説のようでした。何だか「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」みたいな。「Kの手記」をもっと読みたいと思っていても「黒木家の兄弟」になり、「黒木家の兄弟」が面白いからそのまま進んでほしいのに「Kの手記」になったりで、その手法がとっても似ていました。もちろんそれは大雑把な分類で、この小説では「黒木家の兄弟」といえども3兄弟いて、その上使用人もいて、女性たちもいろいろ出てくるので本当はもっと複雑で細かくなってはいましたが…。

ただひとつ熱中できなかったのは、リョウの尊敬してやまない嶋教授が残したフクロウの会とは別の会の内部の権力闘争。この部分は登場人物がいまひとつわかりにくくて要らなかったなあ。そのほかの部分は本当に面白く読めました。

「カラマーゾフの兄弟」を読むのも「新カラマーゾフの兄弟」を読むのも面倒な人はドラマ「カラマーゾフの兄弟」がお勧めです。私はドラマを観てから「カラマーゾフの兄弟」を読み、そしてこの「新カラマーゾフの兄弟」を読みました。ドラマの中の役名も長男が満で次男が勲、三男が涼になっていて「新カラマーゾフの兄弟」と同じ名前だけど、何か意図があるのかなあ?つながりがあるのかなあ?と思いました。ドラマでは黒澤家で「新カラマーゾフの兄弟」では黒木家ですが…(カラマーゾフには黒く塗ったという意味があるので黒という字を苗字に入れないとダメだったとは思いますが…)役者さんたちも斎藤工さんとか滝藤賢一さんとか吉田鋼太郎さんとか、その当時は今ほどブレイクしていなかったときに演じていますが、本当に皆いい味出してます。

参考:ドラマ「カラマーゾフの兄弟」を観て「カラマーゾフの兄弟」を読んだnaonaoのレビュー→http://naoazucar.blog.so-net.ne.jp/2013-05-05

カラマーゾフの兄弟 Blu-ray BOX

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  • 出版社/メーカー: TCエンタテインメント
  • メディア: Blu-ray

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: ドストエフスキー
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2006/09/07
  • メディア: 文庫

 
カラマーゾフの兄弟2 (光文社古典新訳文庫)

カラマーゾフの兄弟2 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: ドストエフスキー
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2006/11/09
  • メディア: 文庫

カラマーゾフの兄弟3 (光文社古典新訳文庫)

カラマーゾフの兄弟3 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: ドストエフスキー
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2007/02/08
  • メディア: 文庫

カラマーゾフの兄弟 4 (光文社古典新訳文庫)

カラマーゾフの兄弟 4 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: ドストエフスキー
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2007/07/12
  • メディア: 文庫

 
カラマーゾフの兄弟 5 エピローグ別巻 (5) (光文社古典新訳文庫)

カラマーゾフの兄弟 5 エピローグ別巻 (5) (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: ドストエフスキー
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2007/07/12
  • メディア: 文庫

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naonao

>nice!をいただき、皆様ありがとうございます。
by naonao (2016-02-10 23:57) 

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