SSブログ

項羽と劉邦8~韓信の復帰 [本]

「項羽と劉邦8~韓信の復帰」を読みました。

項羽と劉邦 8 (潮漫画文庫)

項羽と劉邦 8 (潮漫画文庫)

  • 作者: 横山 光輝
  • 出版社/メーカー: 潮出版社
  • 発売日: 2001/05/23
  • メディア: コミック

横山光輝のマンガ。

漢軍は彭城へ入ると酒宴を毎晩開き、兵士は掠奪放題、見張りも満足にしない状態が続いた。韓信が作った軍律は破られ軍は乱れていた。劉邦は項羽の寵姫の虞姫(ぐき)に酌をしてもらい、虞姫は劉邦の酔っている間に逃げて項羽のいる彭城に来た。彭城では楚の3万の精兵と追ってやってきた漢の50万の兵が戦い(彭城の戦い)、楚の精兵の方が圧倒的に強かった。漢軍は睡水に追い詰められ大河に落とされ血が真っ赤に染まり屍のために河の流れが止まったほどだった。漢軍は30万人の兵士を失った。劉邦は逃げに逃げたが敵の丁公に「見逃してくれたら天下を取った時に功労者とする」と話し見逃してもらい九死に一生を得た。その後枯井戸に隠れ民家の戚氏に厄介となった。この時世話してくれた戚氏の娘は後の劉邦の寵愛を受ける戚夫人であった。その後味方の軍がやって来て張良とも合流。ひとまず滎陽城(けいようじょう)に行き、魏豹元帥の責任を問い魏豹は元帥の印を返した。

その頃劉邦の父の太公と妻の呂后は人質となった。魏は楚の英布を軍師として迎えるために、同郷の九江出身の随何を英布のところに派遣した。随何が英布を説得中に楚の使者が来たため、とっさに使者を英布に切らせ漢に下ることを決意させた。楚の龍且(りゅうしょ)は英布の首を捕るよう項羽に命じられるが、英布が負け始めると英布は漢に逃げた。

韓信は劉邦に信頼されていないと思い自尊心も失いやる気を失って家に閉じこもっていた。張良と簫何は相談して国を挙げての大芝居を打つことにした。漢王の劉邦が項羽に下ったと言う高札がたち街で噂をさせそれを韓信にも信じさせ、やる気を出させ表に出させることに成功。家にいる間に韓信が考えた戦車を劉邦は作らせ、楚との戦で使うことにした。韓信の戦書を項羽に運ばせ読ませ、項羽を怒らせ漢を攻めさせる策に出た。項羽の軍師、范増、別名亜父が韓信の策を見破り項羽に言っても項羽は耳も貸さず漢に出兵。滎陽(けいよう)の合戦で楚は20万もの兵を失い痛手を負った。

巻末は項羽の本拠地の彭城(徐州)へ行く旅。漢の兵馬俑博物館があり、西安の始皇帝の兵馬俑より後に発見され始皇帝の兵馬俑と比べると60㎝ほど小さく、また数も1500体程度。始皇帝の兵馬俑のほかにも兵馬俑があることに驚きました。また劉邦が弟を楚王とした時があり、その孫の楚王陵があり、項羽が兵馬を訓練した「戯馬台」があり、項羽像があり、虞美人との別れを嘆く項羽~「覇王別姫」のシーンを描いた絵画があるとのこと。バックパッカーで気ままに旅行してた時には全く知りもしなかった場所や人物。「三国志」や「項羽と劉邦」の世界を訪ねて中国を旅するのも絶対に楽しいだろうなあと思います。90年代に戻って中国旅行をしたいなあと思ってしまうこの頃。そんなことできないけれど…。

nice!(14)  コメント(1) 
共通テーマ:映画

項羽と劉邦7~張良の暗躍 [本]

「項羽と劉邦7~張良の暗躍」を読みました。

項羽と劉邦 7 (潮漫画文庫)

項羽と劉邦 7 (潮漫画文庫)

  • 作者: 横山 光輝
  • 出版社/メーカー: 潮出版社
  • 発売日: 2001/05/23
  • メディア: コミック

横山光輝のマンガ。

張良が戻り劉邦と再会。陸賈(りくか)は戻らず。申陽と魏豹(ぎぼう)の説得を張良が買って出る。また張良は項羽軍を斉に攻めさせるために、偽の檄文を書いて項羽に送る。斉が魏を攻めるという内容で、項羽の軍師、范増はそれを張良の策と見破っているも、楚は斉を攻め始める。

張良は最初、西魏王の魏豹を説得すると魏豹は漢に下った。次に河南王の申陽を説得に行くが、裏切る陸賈によって張良は捕らえられ楚軍の彭城の送り込まれそうになるが、仲間の樊噲(はんかい)に助けられる。陸賈も連れ戻り漢に仕えさせる。

項羽側では劉邦の一族を捕えようとしていたが、劉邦側は王陵を出兵させ山に住む周吉、周利の協力を得て劉邦一族を救いに行く。この時敵将英布たちが周吉、周利を殺し漢側は窮地に追い込まれるが援軍が来て見事劉邦一族を救う。項羽は王陵を手下にしたいと考え王陵が親孝行であることに目をつけ、王陵の母を捕える。

次に劉邦は東の殷王の司馬卬(しばごう)を討つ計画を立てる。戦って殷側は城に籠り、楚の援軍を待つことに。楚は斉と梁を討つため出兵していたが、殷が負ければ自分たちも不利になると考え援軍を出す。すると漢軍はいきなり退去し、項羽が咸陽へ兵を向けたための退去だと噂を流させた。殷は後追いをしたところ伏兵を置いていた漢に殷軍は総崩れ。殷は降伏することになった。

項羽軍は殷を助けに行くも途中で引き返し、そのため陳平は項羽の怒りを買う結果となり、陳平は漢に走り降伏してしまう。橋渡しの盗賊に遭いながら漢にたどり着き、友人の魏無知を訪ね彼を通じて劉邦に会い、参乗典軍(劉邦に陪乗させ軍を監察する任務)に抜擢されると、長く漢で働く者たちの不平不満が出た。

趙の張耳も漢に降下したいと、漢にはあちこちから降下するものが出てきた。

その頃軍が40万にもなり東征する(項羽を討つ)機運が高まった。しかし張良は反対した。それでも劉邦は出兵。道すがら三老に呼び止められ「大義名分なしに戦はできない」ことを言われ、洛陽で殺された義帝の喪を発表し式を執り行った。ここで韓信と張良は少し時期を待つべきと劉邦に言うが、劉邦は言っても聞かなった。韓信は自ら咸陽 を守らせてほしいと言い、大元帥の印を返す。張良は亡き韓王の孫の姫信に封爵を与え漢の臣にすれば陳留を守ることができるのでそれを一刻も早く伝えに行きたいと劉邦の元を去って行った。そこで劉邦は周りの意見を聞かず魏豹を大元帥にした。

項羽はその頃、斉を攻め勝手に斉王を名乗っていた。項羽は英布に援軍を要請したが英布は仮病を使い出兵せず。英布は項羽に仕えることに辟易していた。

巻末には劉邦の故里の沛県の旅が載っていました。杯を手にし「大風歌」を歌う劉邦像があり、狗肉=犬の肉を食べさせるレストランがあり(韓国でも犬を食べさせるレストランがあったことを思い出した)、沛県の博物館は真っ暗で説明書もない等。また悲劇の名将、韓信のことも。今も漢中市に残る「拝将台」は韓信の大元帥の任命式を行ったその遺跡であること、「史記」を書いた司馬遷が取材に当たった時には韓信が亡くなって100年経たないころで、韓信はチンピラに絡まれた時に言われるままにその股の下を潜ったけれど、後にこのチンピラを呼び中尉に任命したこと、また飯を韓信に恵んでくれた老女には後に千金を与えたなどのエピソードが加えられているとのこと。また韓信の「背水の陣」や後に斉王になりその後楚王になり侯に格下げされ、漢帝国成立後の5年後に都長安でクーデターを起こし処刑された最後まで書かれてました。

全12巻のこの「項羽と劉邦」のもう後半に入りましたが、巻末の文章で韓信のこの先が暴露された形となりました。最後彼がクーデターを起こ処刑されるなんてちょっと残念。ここまで読んで劉邦はたくさんの才能ある部下を登用してきましたが、特にその部下の張良と韓信の二人の活躍は素晴らしい。ブレーンが大切であることは「三国志」も「項羽と劉邦」も変わらないなあと思いました。

nice!(15)  コメント(1) 
共通テーマ:映画

ミッション [アメリカ映画 賞受賞]

アメリカ映画「ミッション」(The Mission)を観ました。

ミッション [DVD]

ミッション [DVD]

  • 出版社/メーカー: ハピネット・ピクチャーズ
  • 発売日: 2003/07/24
  • メディア: DVD

1986年の作品。IMDb評価は7.4。カンヌ映画祭パルムドール、アカデミー撮影賞、ゴールデングローブ賞脚本賞、作曲賞、英国アカデミー賞作曲賞受賞。エンニオ・モリコーネが音楽担当で、ドキュメンタリー映画「モリコーネ 映画が恋した音楽家」でこの映画「ミッション」もモリコーネが担当したと知り観たいと思っていました。18世紀のスペインの植民地であった南米を舞台に先住民にキリスト教の布教をするイエズス会の宣教師たちの話です。

新しく赴任した宣教師のガブリエル(ジェレミー・アイアンズ)は滝の上に住んでいる原住民たちに向けて、持ってきたオーボエを取り出し演奏を始める。それをきっかけにどんどんとガブリエルは原住民に溶け込んでいく。一方原住民を捕まえては奴隷として売り払う商売をしていたメンドーサ(ロバート・デ・ニーロ)は女性を巡って弟を殺し刑務所に入っていた。ガブリエルの勧めでメンドーサはイエズス会に入ることになり、見習い神父から正式な神父になった。原住民のグアラニー族とも溶け込みすべてがうまくいっていた時、スペインとポルトガルの領土の線引きが行われることになり、グアラニー族の土地はポルトガル領となる。その結果イエズス会の宣教師たちは退去し、グアラニー族もジャングルに戻らなければならなくなる。ガブリエルは原住民と共に静かに教会を守ることに決め、メンドーサとそしてメンドーサと共に同じように宣教師をしてるフィールディング(リーアム・ニーソン)二人は植民地支配層に反発し戦いに挑む。しかしたくさんの犠牲者が出てガブリエルも、メンドーサもフィールディングも皆命を落としてしまう…。

密林の中にある川や滝、緑が美しかった。18世紀の街並みとその中で行われるマリア様の祭りや闘牛の様子、教会の中など、旅行した中南米の各都市の街並みを思い出させてくれました。特にマリア様の祭りや闘牛はペルーのオリャイタイタンボで観ていたのでとても懐かしい思いがしました。密林もグアテマラのティカル遺跡に行った時に経験していたので、その思い出が蘇りました。滝つぼに落ちるシーンが迫力あった。ところどころで流れるモリコーネ音楽の「ガブリエルのオーボエ」がとっても心地よく、映画と良くマッチしてた。このモリコーネの音楽があるからこそ映画が余計に格調高く素晴らしいものになっていると思いました。

また密林が舞台で原住民との交流ということで、コリン・ファレル主演の「ニュー・ワールド」、メル・ギブソン監督の「アポカリプト」を思い出し、キリスト教の布教と言うことで遠藤周作原作でスコセッシ監督の「沈黙」を思い出しました。中南米の様子を少しでも実感できている今、この映画を観ることができて余計に良かったです。デ・ニーロも好きだし、モリコーネ音楽も好きだけど公開直後に観ていないのが意外と良かったかも、と思いました。既に観ていたら今観ることもなかったと思うので。

naonaoお勧め度★★★★★[王冠]

nice!(18)  コメント(1) 
共通テーマ:映画

項羽と劉邦6~水火の計 [本]

「項羽と劉邦6~水火の計」を読みました。

項羽と劉邦 6 (潮漫画文庫)

項羽と劉邦 6 (潮漫画文庫)

  • 作者: 横山 光輝
  • 出版社/メーカー: 潮出版社
  • 発売日: 2001/03/22
  • メディア: コミック

横山光輝のマンガ。

大元帥となった韓信が樊噲(はんかい)に命を出す。1万人の人夫を使い1か月で300里ある桟橋を修復すること。しかしあまりにも短期間での過酷な工事なので脱走兵が続出し、漢から楚へ下るものが出た。しかしそれは織り込み済みで韓信の策だった。裏では陳倉道がありこの道を通れば5日で相手側の領地、散閑に出ることがわかっていた。韓信は出陣。その途中で義兄弟の契りを結んだ辛奇にも遭い、辛奇も軍に加わる。散閑の城内ではわざと投降した者たちが城門を開かせた。

ここから章邯(しょうかん)の守る廃丘城を攻めた。散閑城主の章平が耳を斬られて駆け込んできて事情を把握する章邯。すっかり油断していたので慌てた。城に引きこもる章邯を外におびき寄せるため、罵詈雑言並べ城の前で宴会を催す漢軍。章邯は夜討ちをかけるも漢軍は待ち構え火攻めを行う。慌てて章邯はまた城に逃げ帰る。またも章邯は引きこもってしまったため、今度は上流で3日間堰を止めその後一気に堰を切って川を反乱させ城を水浸しにした。泣く泣く章邯は裏の桃林に逃げ、韓信は城の中に入った。

次に董翳(とうえい)が守る高奴城を攻めようとすると、董翳は既に城から離れた場所で待ち構えていた。戦った後董翳は降伏。魏軍は仲間の司馬欣に降伏するよう手紙を書かせる。司馬欣は素直に降伏しなかったが最終的には降伏し、その後韓信は桃林に逃げた章邯を追ったが章邯は自害してしまった。

その後漢軍は咸陽に出発。漢に下ったばかりの呂馬通を使い彼が持っている項羽からの符木で楚の城を開城させる。劉邦が咸陽に入ると多くの民に歓迎された。彼は民に危害を加えていなかったので絶大な人気があった。

巻末には韓信が修復を行った桟道への観光のことが書かれていました。そこには「三国志」の曹操の書いた文字「袞雪(こんせつ)」が刻まれており、孔明が本を読んだ読書台や孔明が木牛流馬を作った場所もあり、孔明の遺体が移された漢中武侯祠もあるとのこと。「項羽と劉邦」と「三国志」の舞台が重なっている場所は結構あり、観て回るのも面白そうです。 また「張王李趙遍地劉」という言葉が中国にあり、これは張、王、李、趙、劉という5つの姓は地に遍く、どこにでもある、という意味らしくこの5姓は今でもとっても多い姓だそう。日本の佐藤や鈴木、高橋、田中、渡辺みたいなものなのでしょう。

nice!(16)  コメント(3) 
共通テーマ:映画

項羽と劉邦5~大元帥誕生  [本]

「項羽と劉邦5~大元帥誕生」を読みました。

項羽と劉邦 5 (潮漫画文庫)

項羽と劉邦 5 (潮漫画文庫)

  • 作者: 横山 光輝
  • 出版社/メーカー: 潮出版社
  • 発売日: 2001/03/22
  • メディア: コミック

横山光輝のマンガ。

韓王が項羽に殺されると張良は項羽に仇討ちすることを決心する。張良が子供の間に流行らせた歌を聞いて、項羽は都を彭城(ほうじょう)に移すことを計画する。都を移すべきでないと意見した韓生を項羽は処刑。大きな鼎(かなえ)に油を煮えたぎらせ煮殺す方法が取られた。項羽はまた皇帝に郴州(ちんしゅう)に移ることを命じその移動中の船で刺し殺し船を沈める。

張良は見込んでいた韓信を訪ねた。持って行った宝剣の一振りは劉邦に、もう一振りは簫何に、残りの一振りは韓信に捧げると言い、漢の軍師としてスカウトする。スカウトされた韓信はいくつもの山を越えて劉邦のいるところを目指し、途中辛奇という男と義兄弟の盃を交わす。やっと劉邦のところにたどり着いた韓信は最初は穀物係に、その後は治粟都尉(ちぞくとい)~年貢米の取りたての仕事を任されたが、それで一生終わるなら逃げ出して他の場所を見つけたほうがいいと考え韓信は夜中にこっそり出た。すると簫何や夏侯嬰がすぐに後を追い韓信を引き留め引き戻し、劉邦に簫何が説得に説得を重ね韓信を大元帥にした。それを見ていた長年仕えていた樊噲(はんかい)が不平不満を言い出すと法令により死刑になりそうだったが恩赦となった。

韓信の大元帥となる式は盛大に行われ、韓信はまず軍律17か条を作り兵にもわからせた。韓信は軍隊の偵察に行くと、監軍の殷蓋が姿を見せず正午にやってきたのを見て韓信は法を犯したので死刑にすると言った。しかし漢王の劉邦はそれを聞くと殷蓋を殺さぬようにと酈食其(れきいき)を馬で走らせたが、漢王の詔を持ってきた酈食其を除き、その従者は打ち首、殷蓋も打ち首となった。韓信のやり方は正しいと簫何も殺されかけた酈食其も賛同するのだった。軍は法に基づき強い軍になっていった。

巻末には漢中の旅が書かれ、韓信の像があり「国士無双」(=一国中に匹敵する者がいないほど優れている人のこと)の文字が刻まれた門がある写真など載せてありました。また漢の長安城について書かれてあり唐の長安城や秦の阿房宮に近いところに城があったことがわかりました。

それにしても劉邦は優秀な張良や簫何のような部下を持ち恵まれています。部下がやっかんで優秀な者を除こうとする場合だってあるので、国を思い君主を思い優秀な人を君主にわからせ登用させる忠実な部下がいることがいかに大切なことなのかがよくわかる話でした。韓信が軍師になったことで劉邦は軍を強くしていけるような予感です。

nice!(14)  コメント(1) 
共通テーマ:映画